「パラサイト 半地下の家族」 映画レビュー すべてに機転の利いたシュールな傑作

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(写真) 中央4人がIT企業富裕層一家パク一家4人。それを囲むのがこの一家の住む豪邸に入り込み、まさに寄生する半地下家族キム一家4人。


<解説>ポン・ジュノが監督を務め、第72回カンヌ国際映画祭でパルムドール、全米アカデミー作品賞も受賞した人間ドラマ。裕福な家族と貧しい家族の出会いから始まる物語を描く。ポン・ジュノ監督作『グエムル -漢江の怪物-』などのソン・ガンホをはじめ、『新感染 ファイナル・エクスプレス』などのチェ・ウシク、『最後まで行く』などのイ・ソンギュンらが出演。


(あらすじ)
半地下住宅に住むキム一家は全員失業中で、日々の暮らしに困窮していた。ある日、たまたま長男のギウ(チェ・ウシク)が家庭教師の面接のため、IT企業のCEOを務めるパク氏の豪邸を訪ね、兄に続いて妹のギジョン(パク・ソダム)もその家に足を踏み入れる。


個人レビュー ☆☆☆☆★★  


☆=20点 ★=5点


ともかくパワフル!  小憎らしいほど機転の利く、目まぐるしい映画だった。


怖いのか 面白いのか 悲惨なのか


見ている側さえ混乱するほどシュール。幾つもの側面をもつ面白さであった。


金持ちと貧困者。怒りの矛先さえない、どうしようもな誰しもがもつ現実的な憤り。最後まで突っ切って描きき切った潔さ!


半地下に住むパク家族は貧困生活を送る日々。だが長男ギウがひょんなきっかけを機に、IT企業の豪邸に住むパク一家娘の家庭教師を引き受けけることになり状況は変わっていく。経歴詐称をし、独断のソフト・コミュニケーションでスルリと奥方、多感期長女の信頼に入り込んだ彼は、さらなるお金儲けで味を占める計画を思いつく。


それは多動傾向ありのパク家次男のため、心理美術カウンセラーとして今度は自分の姉を雇用させることだった。


予想通り、半地下家族は、あとも巧みな「計画」を駆使し、父をお抱え運転手。母親は家政婦となることを成功させ、まんまとこの金持ち一家に寄生することになってゆく。


屈折しているけれど悪だくみにかけては天下一品の詐欺師一家。富裕層独特の浮世離れした能天気ファミリーとの対比のシークエンス。


それだけでもクスッとさせるには十分なのだけれど、作品の卓越したところは、観客が一息ついたそのあとでさらにスピードアップ。予想だにしない「意表をついた」展開に導くことだ。


映画的形相は、半地下の彼らが「計画実行」成功の裏で、パク一家にクビを言い渡せられ失意のもと辞めさせられた元家政婦が、再び豪邸を訪れるエピソードから一変する。


ここからはーまさしく怒涛の如く!


元家政婦の抱えていた「闇」はさらなるショッキング。


暗闇で「覗いてはいけなかったもの」を覗いてしまった奇妙な感覚。チクチクと突き刺さる社会の情勢。けれどーそんなことさえ吹き飛ばすドタバタをポン・ジュノ監督はやってのけてしまう。


「マトリックス」並みのスローモーションアクション。逆にチャップリンさながらの機敏な動き。


だが、ここで観客が満足してしまってはいけない。


飽き足らず踏ん張らないといけない集中力はさらに続く。


大人の時間→パニック映画並みのスタイル→凍り付くホラーさながらと→ふり幅がいくつあっても足りないほど。喜劇性と悲劇性が短い時間で繰り返されていく。時間差手法はお見事としか言いようがありません。


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自分たちが死ぬか生きるか瀬戸際に立っていても、金持ちは相変わらずどうでもいいことで車を走らせる。


息子の誕生日パーティーには何着てくるのだ、なにを持ってくるかだの。携帯片手に品物も見さえせずポンポン高級食材をカゴに放り込む。貧乏人のことなど所詮は微塵にも思っていないのだ。状況の違いにキムは次第に絶望的な敵対心をパク一家に抱くようになる。


役者たちの演技もエキセントリックな部分もあれば、やり過ぎず抑えが利く場面では微妙なサジ加減で実に小気味良かった


ー驚かされるのはポン・ジュノ監督のスピーディな演出と切り替え早いカメラワーク。


鑑賞中、韓国映画(韓国ドラマとも違う)ともすっかり忘れてしまうほどに、昨今ハリウッド映画もしくは海外ドラマと比較しても何ら見劣りしない計算されつくした脚本とリズム。


印象的なズームアップ画面。洗練された背景などがそこにある。


韓国の映画人や技術者のほとんどは、技術を学ぶべく早いうちからアメリカ=ハリウッドに学びに飛ぶという。その結集が表れていると思う。


忘れてはいけないのが、この人間ドラマも観客に無理に押しつけがましさがない。


わたし自身がいつも映画に感じることは「我々、見ている側に委ねてください」ということ。


そこに感動、例え辛辣なものが入っていても映画やドラマはそれでいいと思う。映画や本は作中だからこそキャラが自由に動き周り、そこから発されるなにかはわたしたち自身が、時に迷い、率直に受け止めるものであると思うからである。


これを最近の邦画がやればお涙頂戴。日本のドラマに多く見られる、必ず誰か一人はズッコケ担当者を無意味に配置したような寒いお粗末な種類のドラマになってしまうに違いない。


やりすぎた演技や顔芸はその種類のものだけでよい (半沢直樹は敢えてネラッてやっていたので大好きでしたけれど)


「パラサイト」は多くのことを投げかけてくれた。全編がブラックユーモアに彩られ、ラストのオチのオチまで設計図のように練られている。金持ちと呼ばれる人間の悪気のない屈託の無さ。困窮された貧しさで生きる人たちの切迫感をこれでもかと見せつけてくれた。


悲惨すぎると笑うしかないのだろうか。


悲しすぎる風刺も効いていた、後世に残るだろう一本でした。



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Comments 2

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ギターマジシャン  
パラサイト

映画館へ行くこともなくなり、レンタルビデオも返却が面倒で、もっぱらケーブル放送、地上波放送待ちの自分ですが、このところ、WOWOWで録画したものを見ないうちに地上波でも放送、それも念のため録画したまま、どんどん見ないビデオがたまっていきます。

先日の「天気の子」もそうでしたし、この「パラサイト」も同様で、特に「パラサイト」は、アカデミー賞で話題になり、およそのストーリーやいくつかの場面が繰り返し放送されたので、もう見てしまったような気になっていました。

ただ、今回の金曜ロードショーに際して、前半のコメディタッチから一転、後半は衝撃映像だとか、これをお茶の間に流して良いのかといった情報があり、そんな展開があったのかと思っていた矢先のmimi-pon5さんの絶妙な解説で、これは連休中にちゃんと見ようと思いつつ、グロテスクと言われる場面に耐えられるかとも思案しています。

2021/01/10 (Sun) 07:13 | EDIT | REPLY |   
m-pon5
mimi-pon5  
Re: パラサイト

>ギターマジシャンさま


こんばんは♪  

「パラサイト」はわたしも受賞時に絶対観たいと思いながら未見のままズルズルときてしまったので、今回の地上波放映はラッキー~でした♪


ギターマジシャンさんにもぜひ見ていただきたいです。
構成の絶妙さもなんですけれど、全編にポン・ジュノ監督の映画愛が溢れてるなあと思いました。
彼はスコセッシ監督を尊敬しているようですが、全編にタランティーノとかペキンパー。はては無声映画などを彷彿させるようなシチュエーションがいっぱいありました。 たぶんスゴク影響受けていますね!


たしかに衝撃的な場面はありました~。
公開時に「まさか後半あんな展開に」という声も聞いていたので自分なりに勝手に想像していたんです。けれどそれともまったく違うビックリ展開になり「わーっそうくるかー」みたいな。

しかもそこで終わらないのがまた意表をつくというか。さらにズーンッと二転、三転と転換するのが想定外。いくつのも顔を見せて終わっていくので後からジワジワ~と。


グロテスクなところも、どこかブラックユーモア的。地上波で久々にこういうの見た人は衝撃だったかも。けれど昔は「13日の金曜日」とかホラー映画もバンバンとゴールデン・タイムに放映されていたのを見ていた我々世代には、たぶん耐久力があるので大丈夫かと思われます^^ 好き嫌いを超えていろいろなことを考えさせてくれる一作で、映画好きな方にはぜひとも観ていただきたい作品でした。


わたしもギターマジシャンさんとほとんど同じ状況です~(^^ゞ
DVDやBlue-reyは購入したことで満足し棚にしまったまま。見る時間もないのでBSやCSなどで録画だけした映画や海外ドラマなどがHDDにどんどん溜まってゆき~なのでだいぶ経ってからの感激や感動になってしまいリアルタイムから外れてます~泣笑


ここ数日冷たい風が吹いて寒さも厳しいです。お風邪などにどうぞお気をつけ下さいね。コロナに大雪。いいニュースがないですね。こうしてお家で映画が見れるだけで幸せなことかも、、と思っています。
ギターマジシャンさんも地上波映画をチェックされてると知り嬉しくなりました。コメントありがとうございます(^^*)/

2021/01/10 (Sun) 21:07 | EDIT | REPLY |   

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