「運び屋」クリント・イーストウッド  感想レビュー 信念の映画人

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映画 「運び屋」 2018年米


<解説>「The New York Times Magazine」に掲載された実話をベースにしたヒューマンドラマ。麻薬を運ぶ90歳の男に待ち受ける運命を描く。監督主演を務めるのは『ミリオンダラー・ベイビー』などのクリント・イーストウッド。イーストウッド監督作『アメリカン・スナイパー』のブラッドリー・クーパー、『マトリックス』シリーズなどのローレンス・フィッシュバーンらが共演。


<あらすじ>イーストウッド演じるアール・ストーンは80代の男。家族と別れ、孤独で金もない彼に、事業差し押さえの危機が迫っていた。そんな時に、ある仕事が舞い込む。ただ車を運転すればいいだけの訳もない話だ。しかしアールが引き受けてしまったのは、実はメキシコの麻薬カルテルの“運び屋”だった。たとえ金銭的な問題は解決しても、そうとは知らずに犯してしまった過去の過ちが、アールに重くのしかかっていく…


個人レビュー ☆☆☆☆★  ☆=20点 ★=5点


御年90歳に近いイーストウッド。 なんと優しくジワジワと胸に染み込む味わい深い映画だろう。


わたし、多くの世界中の映画ファンにとってのイーストウッド映画は、ほぼ期待を裏切らないというもはやブランドを背負っている。しかし、どの映画を撮っていても、彼は作品にも、自身が主役を演じた役柄にも決して多くは入り込み過ぎない。


わたしは、いつも人間や生活を 『俯瞰』 して映し出すイーストウッド作品が、とてもとても好きだ。


作品の主人公アール(イーストウッド)は、孫娘の結婚式に出席することすら、家族から嫌悪感をもたれるような頑固ジイサンだ。想像する限り、若い頃は家族をまったく顧みず仕事ひとすじの人間。時に暴言も吐き、好き放題やったあげく離婚された男。


いまや別れた妻(ダイアン・ウィースト)には顔すら見たくないと思われ、娘(なんとイーストウッドの実娘アリソン・イーストウッドが演じている!)とも険悪。 唯一そんな彼に優しくするの孫娘だけ。事業も家も差し押さえられる寸前自暴自棄になった彼だが、ひょんなことからなにも知らされないままメキシコの麻薬カルテルの運び人とされてしまう。


気がついた時はすでに遅し。彼はそれでも大金を手に入れ、自分なりのロード旅を謳歌するのだ。彼なりの人生を・・。


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ふとした出会いがきっかけでアール(イーストウッド)はなにも知らぬまま、大麻の「運び人」として車で目的地までの旅をする羽目に。 飄々とした中に、苦み走った顔がもはや老境に達したイーストウッドの味になっている。


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麻薬カルテルを追っている刑事は、いまやイーストウッドを師と仰ぐ売れっ子のブラッドリー・クーパー。上司にローレンス・フィッシュバーン。敵の麻薬王に、あの懐かしかったー「ゴッドファーザーパートⅢ」などのアンディ・ガルシアが久々の登場でビックリ!


このような一流の俳優たちがゲストに出演しているのだけれど、みなイーストウッドを尊敬し集結した感がある。きっと彼の映画なら一も二もなく引き受けたのだろうと。


だが不思議とーこれだけのメンツでも、193センチ!93キロある白髪の、ともすれば走れば息も切れそうなイーストウッドが表れるとスクリーン上では、どの俳優もまったく霞んでしまうのだ。これこそ正真正銘のスターであり、長年映画ファンを裏切らない作品を作り続けてきた男。 オーラと信頼感なんだろうと思う。


正直、映画のストーリーは事件性に爆発力がある訳でもない。意外性のあるどんでん返ししがあるものでもない。人生の黄昏時を迎えた、タカ派のアメリカ人男がありのままで生きることにほんの少し後悔し、事件を通し、さまざまな人種や拒絶してきたコミュニティたちに相変わらずキタナイ言葉を吐きながらも(笑)そのあとの人生を少しだけ受け入れ生きていこうとするロード・ムービーだった。


思い返せばイーストウッドが還暦を過ぎたあたり。93年「シークレット・サービス」「ブラッドワーク」あたりから、彼は走ればゼエゼエ息を切らし顔に刻まれるシワを隠そうともせず主演する映画では、その確固たる己の自覚する黄昏期さえ見事にものにしてきた。


そのー真骨頂さながらだったのが「グラン・トリノ」でしょう。 


当時ー劇場で見た友人が「頑固ジイサンすぎて笑うしかなかった。でもすっごく良かった!」と絶賛してたのを聞き、いそいそと観に行ったのが十年以上前 戦前から人種差別が当然として生き抜いてきた頑固老人とアジア人青年との交流の物語だった。


観た時、誰しもが避けてきた問題ながら、直球勝負でしかもアメリカ人のヒーローたる所以のイーストウッドがそれを投げてきたのだから驚いた。決してお涙頂戴にしない。それでも人は感銘を受ける。彼の「俯瞰」での見事さだった。


「運び屋」はさらにユーモアと、人々への哀愁、どんな人種やコミュニティも愛すべき人たちであるというイーストウッドのさらなる賛歌のように思った。


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別れた妻とも和解の日が。その時はすでに遅すぎたのかも知れないけれど、それでも心と心がたしかに結びついた。


妻役のダイアン・ウィーストがまたサイコー。終始「あなたなんかほんとうに大っキライなのになんでここにいるの?」という心底、嫌そ~な表情が(笑) チャーミング。これで、どれだけイーストウッド亭主がイヤな旦那だったのかが分かるというもの。さすがに2度のオスカー受賞者であります!イーストウッドもダイアンの演技には大いに敬意を払ったことでしょう。


映画はアメリカのロード・ムービーとしても楽しめる。車、音楽、カフェ、ハンバーガー、そして多人種。少し前にちょうど「グリーンブック」を見ていたので、2つの異なった時代のアメリカの風景。ロード・ムービーを堪能した感じだ。


趣は違うがどちらも実話をペースにしている。もうひとつ共通しているのは、どちらも実話ながら映画的などこかファンタジー的優しさに包まれていること。


きっと世の中はこうであってほしいという制作人の想いが伝わってくる。 


なにはともあれ観終わって感じるのは、イーストウッドはやはり映画界にとって特別な人だということ。 


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自己の信念を曲げ続けない映画人イーストウッド。最後に所有の雑誌から若きイーストウッドのカッコ良さも。

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所有「スクリーン」誌から 70年代のクリント・イーストウッド この頃から渋い~歳味わい深く年を重ね、そして今。憧れます。


彼こそ生きる伝説の紛れもない一人でしょう。いつまでもお元気で我々に刺激と勇気を与えてほしい。


StayHomeで、HDDに溜まっていた映画など見る時間が少々出来た。折につけ感想レビューを綴っていければと思う。



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Comments 6

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ギターマジシャン  
クリント・イーストウッド

リアルタイムで知ったのが「ダーティー・ハリー2」ですが、映画を見たのではなく、ブルース・リーの「燃えよドラゴン」に夢中になって、ロードショーやスクリーンを買うようになり、洋画のタイトルとあらすじ、出演者という知識だけ詳しくなった頃です。

クリント・イーストウッドは、それ以前のマカロニ・ウエスタン(死語?)、ダーティ・ハリーの活躍だけでなく、「大脱走」「パピヨン」とはまた違った脱走ものの「アルカトラズからの脱出」、若手刑事とのバディものの「ルーキー」も好きでしたし、アクション俳優と思っていたのが、「マディソン郡の橋」では、また別の一面を見たようでした。
(先に原作を読んでいた自分としては、もっと若い俳優を想像していたのですが・・・)

監督業が主になり、だんだん引退していくのかと思っていましたが、m-ponさんの記事を拝見すると、まだまだ御大は健在、かつてのヘンリー・フォンダのようないぶし銀の役もこなしているのかなと感じました。

2020/05/16 (Sat) 07:30 | EDIT | REPLY |   
こはる  
ご無沙汰です!

m―ponさま
大変ご無沙汰しております
以前お世話になりました こはるです
その節はありがとうございました

益々の素晴らしい知識、そしてそれを表現する文章…
ただただ感動するばかりです

志村けんさんの件が載っておりましたが
あの数日後、我が家の大切なこはるが虹の橋に旅立ってしまいました
志村けんさん同様、ホントに突然あっけなく・・・・
目の前で起こっている事が理解できず、訳がわからず…混乱するばかり…
最近、やっと以前の生活に戻りつつあるような感じです
とは言え、世の中はまだまだ騒ぎの中…
テレビ番組も再放送や編集したものが多く、久しぶりにDVD観賞する時間も増え、あのビートルズDVDを見て…
『m―ponさん、どうされてるかなぁ~。でもすごいタイミングで巡り合って長年の探し物を与えてもらったなぁ~』と 何だかご縁に感謝したくなって又 書かせて頂いている次第です
もう一年なるのですね…
本当に明日の事はわからない、何が起こるかわからない、生と死は常に背中合わせ・・・・わかりきっていたはずの事を嫌でも実感するような一年でした

こはると巡り会えた事、m―ponさんと巡り会えた事、改めて感謝です!
突然すみませんでした
これからも楽しいブログ よろしくお願いいたします
陰ながら 応援!しております
勿論 読ませて頂きますね

季節柄 ご自愛下さいねっ
テーマに沿わないコメントですみません~

2020/05/16 (Sat) 12:03 | EDIT | REPLY |   
しろくろShow  
こんばんは

こんばんは、先日は拙ブログへのコメントありがとうございました_(._.)_

引っ越しも無事終わりネットも開通したのでぼちぼちブログ活動も再開することにいたしました。あらためてよろしくお願いいたします。

イーストウッド私も大好きな俳優さんなので今回の記事には思わず反応してしまいました。自分の場合子供の頃からテレビで見た作品が多くて、未だにどうしても山田康雄さんの声がアタマから抜けないのですが( ̄。 ̄;)映画館で最初に見たのは「ダーティハリー4」か「ファイヤーフォックス」のどちらかだったと思いますけど、このときご本人の肉声を初めて耳にして(少し記憶がアイマイです・・・)本物の声かっこええやんと感動したモノでした。

「グラントリノ」も劇場で見ましたが、晩年のイーストウッド映画では私もいちばん好きな作品です。何の根拠もないのですがわたしは勝手にあの映画を「ハリー・キャラハンの老後物語」だと決めつけていて、途中街の不良相手に自らの胸元に手を入れたときはマグナム44が出てくるんじゃないかと(__;)無茶な期待をかけてしまいました。「運び屋」も見よう見ようと思いながらマイリストに入れたまま見てなかったのですが、そろそろ鑑賞しなければいけませんね。

※これからちょいちょい遊びに来させていただこうと思っていますので、今後ともよろしくお願いいたします(^^)

2020/05/16 (Sat) 18:16 | EDIT | REPLY |   
m-pon5
mimi-pon5  
Re: クリント・イーストウッド

ギターマジシャンさま

こんにちは♪ いつもコメントありがとうございます。 

ギターマジシャンさまは「ダーティ・ハリー2」がリアルタイムだったのですね!

ブルース・リー人気も相成って、あの頃から「スクリーン」に「ロードショー」も加わり洋画絶頂期突入!という時期ですね。
当時ヨーロッパ勢ではドロン人気が圧倒的でしたけど、アメリカ男性俳優陣の濃ゆい~こと(^^*)
イーストウッドにマックイーン。ポール・ニューマンやチャールズ・ブロンソン~カラーページ見るたび男臭さ満載。


おお!「アルカトラズからの脱出」~わたしが観たのはかなり後だったんですけど、マックイーンモノとはまた違ったひと癖あるイーストウッドの魅力に、あの映画で初めて気がついたような気がします。
(わたしはどちらかというとずっとマックーイン派?だったものですから^^

それからダア~ッと遅れること数年「ダーティ・ハリーシリーズ」を一気観。ほか70年代のジミメな彼の監督作とかの幾つかにもハマり、その手腕に唸りました。ヒーローとアウトローが隣り合わせ。どこか異質な漂いが超魅力。


90年に突入してからは言わずもがな。彼の監督作であれば大抵観てきました~ほぼ外れなし。信頼感と安心感ですね。


でも、ギターマジシャンさまと同じです~!(笑)
「マディソン郡の橋」…こ、これだけはミス・キャスティング。
評価も高くなく、イーストウッド自身もいまはなかったことにしたい作品じゃないかって思います(^^; もはや忘れてるかも。

わたしも先に原作を読んでいまして、主人公に相当イメージを抱いてたものですから、主演がイーストウッドと知った時は全然違う~と。(わたしのイメージはニューシネマパラダイスの中年トトを演じたジャック・ぺランのような白髪がなびくような繊細な二枚目中年カメラマン) 演出もピリッとしておらず、甘味だけの恋愛モノはやはりイーストウッドには合わなかったですね。


いまのイーストウッドはある種、俳優としても監督としても特定の人間にしかいけない高みに到達していると思います。
生きる伝説ですね!

2020/05/17 (Sun) 11:54 | EDIT | REPLY |   
m-pon5
mimi-pon5  
Re: ご無沙汰です!

こはる様

こんにちは。開きましたら、こはるさまのコメントが!
こちらこそ本当にありがとうございます。

こはるさまの事、もちろん忘れる訳などありません。
昨年楽しく懐かしいお話をたくさんさせて頂いて、ふとした時にもこはるさまのことや
「こはるちゃん」のこと思い出して優しい気持ちになっていました。

こはるちゃんが虹の橋に旅立ったとお聞きして、涙がこぼれてしまいました。
それまでお話を聞いただけなのに、とても身近に感じていた存在なのですぐそこにいるような気がしていたのです。


こはるさまのお気持ちを思うと、どんな言葉でお伝えしても足らないと思います。
わたしの人生の中でも今まで二度、愛犬が虹の橋へと渡っていきましたけれど、その時の悲しさや切なさ、いとおしさは
言葉では表せないものでした。家族と一緒ですものね。これは動物と長い間過ごされた方だけが分かる想いと思います。

「こはるちゃん」が不思議な、そしてまさに運命的なご縁でこはるさまの元にやってきてご家族になったお話。忘れません。
こはるちゃんは、こはるさまのご家族の一員になり、可愛がってもらって愛されて、こはるさまの家族で本当に良かったって思っていると思います。

わたしもそうですし、愛犬や動物を見送った方と、ときどき近所でも話したりお話を今まで聞きますと、みんな同じ気持ちで、心が落ち着いて穏やかになるのは、時間の癒し。時が流れ受け止めて、少しずつ少しずつ素晴らしい思い出になって、そして、そうなんだ、これからはずっと心の中で一緒なんだと気付くんですね。

こはるさまも毎日の生活の中。ほんとう焦らずゆっくりとお進み下さいね。こはるちゃんもいつも見守っています。


こはるさまのおっしゃる通り、今年ほどコロナのことも、志村さんのことも、来年どころか明日なにが起こるか分からないと感じた年はなかったように思います。昨年今ごろは「令和」に湧き、今年世の中はオリンピック一色だった筈ですものね。
自分の年齢にもよりますが、身内も周りも自分自身も、ほんとう一日一日無事にすごせればラッキーと思うようになりました。

わたしも、こはるさまとこはるちゃんに出会えて心から良かったです。
またいつでも気軽に暇つぶしにでも覗いてみて下さいね。ビートルズでも音楽のことでも、なんでも。
ダラダラ~と好きなことだけ好き放題に書き綴っている上にしかも更新は怠っているというブログですが…もう反省しきりであります~

こちらは要約、自粛も解除になりましたね。これからまた暑くなるのかな。
こはるさまも、どうぞどうぞお身体ご自愛下さいね。


2020/05/17 (Sun) 14:41 | EDIT | REPLY |   
m-pon5
mimi-pon5  
Re: こんばんは


しろくろShowさま


こんにちは♪
こちらへの初コメントありがとうございます(^-^*)感激してます~

お引越し完了お疲れ様でした&おめでとうございます!引っ越しそのものも大変ですけれど、あとの手続き変更とかも色々大変ですよね(><) 新環境でさらにさらにパワーアップしたブログ楽しみにしてます♪


「ファイヤー・フォックス」「ダーティ・ハリー4」ああ~懐かしいです~!ギラギラ80年代イーストウッド全開の頃ですね!
映画館でこれら見た時は興奮したのではないですか!?いつの時代も男の子だったら大好きな映画ですね(^^)/


>本物の声かっこええやんと感動したモノでした。


しろくろShowさま、ほんっとに分かります~(笑)

子供のころはテレビ洋画劇場の吹替えイメージが強く、俳優さんたちの声もそのまんまで染みついちゃってましたよね。
山田康雄さん然り。今もテレビの吹替え劇場なとでイーストウッド山田さんを聴くとワクワク嬉しくなっちゃいます。
イーストウッドご本人の声は渋くてちょっと掠れ具合もカッコイイですよね。

わたしもアル・パチーノ。ずっと野沢那智さんの甘い声そのまんまと思ってきていたので、「スカー・フェイス」を劇場で観たときは、しろくろShowさまと同じく=逆インパクトでひっくり返りました。ご本人はこんな独特のしゃがれ声だったのね!と


「グラントリノ」晩年ではやっぱり一番お好きとのこと(^m^)ハリー・キャラハンの老後物語コメントに思わずニンマリしてしまいました。冷酷だけどそこに確固たるブレナイ人間性。屈折してようが何言われようが悪は打つ!老境になっても変わらない孤高な姿勢はハリーそのものでした。ほんとに。

「運び屋」は今までのイーストウッド作品と比較するともしかしたらいちばんゆったり時間が流れる映画かも知れません。決して刺激的ではありませんが、さらに年を重ねたハリーとすれば、きっとしろくろshowさまも堪能される気がします。

しろくまshowさまのブログにもこれからもますますお邪魔させていただきますね。
宝箱いっぱいの楽しい記事、今後も楽しみにしております。本当にありがとうございます♪

2020/05/17 (Sun) 16:47 | EDIT | REPLY |   

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