追悼 ジャン=マイケル・ヴィンセント 名作「ビッグ・ウェンズデー」 あなたを忘れない

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憧れのアメリカという国。そこからの情報が、まだ目の前の四角い箱からも、手のひらの内にある魔法からでも伝わってこなかったころ。

あの時代に、テレビ、そして映画から、燦々と輝くアメリカへの夢と憧れを投影し発散させ、私たちに届けてくれたスターがいた。青春映画の傑作「ビッグウェンズデー」や80年代に世界中で人気を博した海外ドラマエアーウルフ」なとで主演を務めた俳優。

その人は、ジャン=マイケルヴィンセント

そんな彼が長き闘病の末、 旅立ったということを一報で知った時。胸の奥が締めつけられるような寂しさでたまらなくなりました。

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サラサラの茶褐色の金髪。奥目がちのシャイな青い瞳。文句なくハンサムで、日に焼けた小麦色の身体。幼き頃から趣味はサーフィン。ウッドデッキで自家製のチェアで、くつろぐこと。


アメリカにはこれほど魅力的な人がウヨウヨいる(←いるわけないのだが)ところなの?それがアメリカか~とまあ錯覚しそうになるほど、日本人から見ると眩しいほどの個性だった。


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ブラット・ピットではありません!!(プラビも好きだけど^^) 70年代のジャン=マイケルヴィンセント昔から金髪ロンゲに弱い~~美しすぎます(*´艸`*) (youtube画像より)


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81年TVミニシリーズ「戦争の嵐」に出演 これほどsexyでハンサムな人は今の俳優でも中々探すのは難しそう。ホントいい男

・・・まだ海外スターの名前も覚えるのも精いっぱいだったあの当時。


『なんでこの人のネームは三つもあるの~覚えにくいよー』と嘆きながら、それでもこの名前が言えるようになった時は無性に嬉しくて、何度もつぶやいてほくそ笑んだりしたものです(笑)

ジャン~ マイケル~ よっしゃあ~ ヴィンセント・・・フフッ 言えた!

なんて~案外、私のような熱心な十代の若い映画ファンはその頃多かったのではないでしょうか。それくらい好感度もあり男女共に支持率が高いスターでした。




80年代には、チェイサーなどの車や多数の日本企業のCМにも出演。お茶の間でもお馴染みとなり、女性からも、なにより男性から見ても兄貴的な包容力があった人。


彼は決して特大級の大スターではなかったかもしれないけれど、我々世代より少し上の先輩方にチャールズ・ブロンソン、リー・バン・クリーフ、ピーター・フォンダなど男からも憧れられる骨太の俳優がいたように、我々にとってジャン=マイケルヴィンセントが画面に出ている安堵感と安心感はハンパなかった。

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大人気ドラマ「エアーウルフ


もちろん、それは80年代「ナイト・ライダー」と人気を二分した海外ドラマ。高速ヘリドラマ「エアーウルフ」で彼が演じたベトナム帰りのヘリコプター操縦士ストリングフェロー・ホーク役の存在が超ド級だったことも大きかった。アメリカではCBSで1984年1月22日から1986年5月29日まで全55話放送。


ただ、今になって考えれば・・このドラマのヴィンセントのギャラは当時の最高額。その想像を超えてあまりあるプレッシャーが彼にのしかかり、それまで以上に私生活が混沌としたのではないかと思うと少し切なくなったりしてしまいます。


欧米では往年の海外ドラマの根強いファンがいるけれど、「エアーウルフ」もそのひとつ。今も絶大な人気でアメリカでもファンの集いが開かれるほど。当時、日本でもアクションが人気を博し、経営者役の名優ボーグナインとのコンビネーションも軽妙で楽しく、私も「金曜ロードショー」の放映が待ち遠しくてたまらなかった。


けれど、、 映画好きな私には、他に多数出演作がある彼の中でも、やっぱりこの作品の彼が忘れられない、たぶん永久に・・・


その映画は伝説のサーファン映画でもあり、青春映画の金字塔ともいわれたあの作品

 「ビッグウェンズデー」 です。


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幻の大波"ビッグウェンズデー"に挑むサーファーたちの青春を描くサーフィン映画の決定版!1978年制作 監督はジョン・ミリアス


伝説の大波。ビッグウェンズデーに挑戦する夢。サーフィンに情熱を燃やした3人の青年の友情を描き、彼らの数十年の物語。たどるベトナム戦争期の青春の哀歓が涙を誘った。ミリアス監督が自分の青春期の思い出とサーフィンへの情熱をテーマにして作ったもうひとつの「アメリカン・グラフィティ」 (当時の映画雑誌より)


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当時は公開前にも、さまざまな映画誌や情報誌に取り上げられるほど大注目されていました。なにしろサーファーなんてまだまだ「なんぞや?」なんていう人も日本に多かった時代。どれほど多くの若者がワクワクしていたでしょう。


1960年代はじめ。カリフォルニア。ケネディも存命で、ベトナム戦争もまだ少し実感のないころ。青春を謳歌していた3人のサーファーたち。彼らの夢は世界最大のビッグウェンズデーという波に挑戦すること。でもその日はなかなかやってこない。


そのまぶしい程の青春時代から、ほろ苦く成長する大人になるまでを演じたのは当時フレッシュな若手だったこの3人。(と、いってもジャンもビジーもこの時34歳だったのだから逆に若々しさを演じていて驚くくらいだ)


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ポイント岬で最高の伝説サーファーといわれるマット・ジョンソンを演じているのがジャン=マイケルヴィンセント。映画の中心人物。開放的で優しい面もあるが、優れたサーファーとしてのプライドに自分自身が負けそうになり苦難することも。


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ブロンドの典型的なハンサム、その上マジメで誠実。ハメを外さない良識的な青年ジャックを演じるのはウィリアム・カット。彼もこの頃もっとも若手で活躍が期待されていた一人。映画「キャリー」で、学園一のモテ生徒を演じ、いじめっ子キャリーを紳士的にエスコートしてプラムに出かけ・・とんでもないことになる映画史に残る残酷なシーンはご存じのとおり。


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ゲイリー・ビジー演じるのはお調子者で、どこか、やさぐれているけれど、もしかして一番典型的なヤンキーらしい好青年リロイ。


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まだなにもかもが平和だったあの時。みなが若くてハチャメチャで楽しくて。夢だけを追っていて幸せだった日。

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毎日、泳いでダイナーによってそれとない雑談をする。愛らしいウェイトレイスのペギーもいて、毎日飲んでは親にお目玉をもらいホーム・パーティーで仲間とはしゃぐ日々。将来の夢について真剣に考えなきゃならないのはみんな分かってはずなのに。


ところがこの映画の若者たちにも、ヒタヒタと時代の変遷の波は押し寄せます。海辺の貝殻がひとつひとつ壊れて、砂に溶けていくように。


伝説の男と言われたマットは、ペギーと結婚して父親になったものの、過去に彼が名サーファーだと誰も信じてくれないような姿になって・・ジャックや仲間から仕事に就くよう説得されようが、彼の心にはいつもサーファーとして夢を実現させたい気持ちが。
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そして監視員として働いていたジャックのもとにも、ついにベトナム戦争への召集令状が届き・・。
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ケネディ暗殺。さまざまな平和運動。ベトナム戦争の泥沼化。この映画は78年の作品。この時期の多くの作品がベトナム戦争の呪縛を解かないではいられない通過儀礼のような時代。

「帰郷」「ディア・ハンター」「アメリカン・グラフィティ2」「タクシー・ドライバー」など。70年代後半。地獄のようなベトナムの戦地から帰ってきた若者も中年期にさしかかってきたころ。それを乗り越えなければアメリカは次に進めなかったはず。

そして、この作品のマットとリロイはすったもんだの徴兵検査の挙句に戦争行きは逃れたものの、感受性が強いジャックは戦場に向かうことを決意して。変わらぬ友情だけは大切にしたいと確認しあう仲間たち。

そして激動の60年代も終わりをつげ、ジャックは戦場から無事に戻ったものの、愛を誓った恋人は別の男性と結婚しており、サーフィン仲間には戦場で命を失った者もいた。もうそのころはすべてが変わっていたことを再開した3人は思い知ります。

あのまぶしかった頃の青春は、もう二度と帰ってはこないのだということを。


再会した3人が酒を交わしながら若き日常や昔を思いながら泣きあうシーンは抒情的で心打たれます。男性同士が肩を寄せ合い泣くシーンはとてもとても切ない。


そして時は70年代半ば、、、、彼らは知lります!ついに、あのビッグウェンズデーがやってくることを。


長年の夢。特製のロングボードを抱えて、浜辺に向かうマット・ジョンソン。もちろん演じるのはジャン=マイケル・ヴィンセントだ。
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そして、そこにはかつての仲間、ジャックとリロイの姿も!

微かに髪に白いものもまじったし、大切に背負うものも増えたけど、そこに言葉はいらない。微笑みあう3人の笑顔のなんと素敵なこと。熟たる姿は、もうただただ、カッコウイイとしか言えない雄姿です。悶絶無用じゃあ~


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監視員たちの警告を無視し、はじき飛ばされる多くの新サーファーたち。そしてついに伝説の男マット・ジョンソンが波に乗ります。
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むろんまだCGもない時代。繰り広げられるサーフィン・シーンは不可能とも思える迫力で観る者をくぎ付けに。一度映画館の大スクリーンで観てみたかった!


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そして別れの時・・。「元気でな」

聴衆に伝説のマット・ジョンソンである喝采を浴びても、もう彼らの帰る場所はここではない。傷を負ったマットを待っているのは温かい家族。若手が確実に育っていることも見届けて、ジャック、リロイ。3人はそれぞれの場所へ。 

そこには、もう前の時のような涙はない。その彼らの姿がせつなく、またそれ以上に清々しくて。

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浜辺を静かに、なごりおしそうに、ずっと見続け。。そして・・

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ゆっくり去っていく、マット・ジョンソン。彼は波に別れをしているのでなく、もう二度と戻ることのない輝く青春に決別していたんですね。


私はジャン=マイケル・ヴィンセントのこともあり、このたび何十年ぶりかにDVDを観なおして、オープニングから泣いてしまいました。

若い頃に鑑賞した時に伝わった躍動感や感動以上に、これはアメリカの一時を生きた若者の青春期である以上に、変わらなければならない人生の物語だったんだと分かったから。以前よりずっと心に染みいる感傷がありました。


・・もう20年近く前のことでしょうか。なんとなくの巷の情報で、現在のジャン=マイケル・ヴィンセントが、私たちファンが(勝手に)スターはそうであってほしいと願う気持ちとは少し違う状況におかれていることを知った時、私はあえてそれを深く検索し知ろうとはしなかった。

なぜならそれを知り、一体なんの意味があるのだろう?と自問自答したからです。

そして今回、欧米での追悼記事を知りたく、偶然、晩年の彼がご不自由な身体で、それでもファンのために懸命にサインしようとしている姿を見てもう胸がいっぱいになりました。

その姿だけで十分。人生は長く生きていれば様々なことがある。長い間、一番辛く苦しんでいたのは誰よりも彼自身だったと思うから。

私たちにとって彼は永遠に「エアーウルフ」のホーク操縦士であり、「ビッグウェンズデー」の伝説のサーファー、マット・ジョンソンです。




「Big Wednesday ビッグウェンズデー」 trailer


「Airwolf エアーウルフ」 (Themeテーマ) すでに700万回以上の再生 三万超えのナイス ヴィンセントへの追悼コメントで溢れています。


水野晴朗解説 金曜ロードショー 「エアーウルフ」 !オープニングから演技まですべてが超カッコイイ!!ジャン・マイケル・ヴィンセント(磯部勉) アーネスト・ボーグナイン(富田耕生) 日本版の声優陣もサイコーです!


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ジャン
いま、あなたは自由になって、思いきり空を駆けめぐり、大好きだと語っていたお手製のボードで波に立って思う存分サーフィンしてるのでしょうね

楽しい思い出 いっぱい いっぱいありがとう

私たちは あなたを決して忘れない

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Comments 2

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ギターマジシャン  
ビッグ・ウエンズデー

原作なのか、映画からのノベライズなのか、角川文庫の帯の「伝説のビッグウエーヴに乗って、あの青春の日々が帰ってくる」の文字に惹かれ、先に小説を読みました。

角川の「読んでから見るか、見てから読むか」戦略にはまってしまうことが多かった時代ですが、文庫本を見つけたのは、ロードショー公開からは数年後と、遅かったです。

ほどなくテレビで見て、冒頭のいかにも10代という幼い顔のマイケル・ビンセントに、さすが役者は違うなあと感心しましたし、「アメリカンヒーロー」で、ずっこけスーパーマンを演じるウィリアム・カットがシリアスな演技をしていたのも感動しました。

青春の日々の追憶のようなストーリーは、あまりによくある設定ですが、それでも、ベトナム戦争があったり、過去の人として扱われる主人公、約束の日に集まってくる仲間たちといい、これ以上ないというくらいの感動ストーリーでした。

大学の友人は、この映画の影響で、髪型を真似たうえに、突然、サーファーになると言ってハワイへ行き、しばらくバイト生活しながら波に乗って、帰ってこなかったほどです。

自分の好きなギタリストもそうですが、10代の頃からファンだった人たちの訃報に接するたび、自分がそれだけ歳を取ったのだと自分に言い聞かせつつ、どうにもやるせない気持ちでいっぱいになります。

2019/03/18 (Mon) 00:50 | EDIT | REPLY |   
mimi-pon5
mimi-pon5  
Re: ビッグ・ウエンズデー



ギターマジシャンさま

胸アツ&涙モノの数々のエピソード教えて頂き大感激です(^-^*)ありがとうございます。

お友達が映画の影響で髪型まで真似して、サーファーになりハワイにまで! ワアッ~当時どれだけこの作品が若い方に影響与えたのかが分かります。つくづくスゴイことですね。


より調べましたら、映画雑誌「スクリーン」の79年度読者の選ぶ年間ベスト20で「ビッグ・ウェンズデー」は、1位の「ディア・ハンター」に次いでなんと2位でした!「ロッキー2(3位)」とか「エイリアン(8位)」よりも上。本当にみんなに愛され支持された作品だったんだと改めて思いました。


ギターマジシャンさまのおっしゃる通り、この映画は楽しい時間だけではなく、友情とか別れや挫折、しみじみする情感まで描いているのがより今も心に響いて。

青春映画は、いつのまにか風化し自然に消費していくものも多いですが「ビッグウェンズデー」は確実に残ったと実感しています。

またバックで流れる音楽も素晴らしく、60年代POPSのオールディーズからハワイアン~また壮大なスコアありで聴いてるだけで涙涙でした。サントラ完全盤は現在はどうも廃番になっているようで(><)残念です。

映画ノベライズ本も懐かしい~~やっぱりあの頃、男性の憧れはヴィンセントで女子はウィリアム・カット派だったのかな(^^)3人とも若きサーファー役にピッタリはまってましたね。


もしも…ヴィンセントがずっとお元気な状態だったら、、初老になり白髪になった3人がもう一度サーフ・ボードを抱え、一緒に丘に立つ姿が見れたのかもと思いを馳せましたが、それも永久に叶わなくなってしまい、とっても切ないです。


ずっと憧れのスターだった人の旅立ちは、ひとつひとつの素敵な思い出が遠くなるようでかなりこたえますね。残してくれたものは永遠に残っていくけれど寂しさでいっぱいです。救いは作品は永久に残ること。

それらがずっとこれからも宝物ですね(^-^)




2019/03/19 (Tue) 19:10 | EDIT | REPLY |   

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