『裸の華』桜木紫乃 誰しもが何かを背負って生きている その中での希望

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裸の華 (集英社文芸単行本)裸の華 (集英社文芸単行本)
桜木紫乃

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舞台上の怪我で引退を決意した、元ストリッパーのノリカは、故郷で店を開くことに。ダンサーを募集すると、二人の若い女性が現れて―。踊り子たちの鮮烈な生き様を描く、極上の長編小説。


私は桜木紫乃の小説が好きだ。


彼女の小説を読むとわたしはいつもNHKのドキュメンタリー番組「72時間」を思い出す。


そうー最近、ほとんど面白くなくなったと感じ見る機会の少なくなったテレビ番組の中、自分からチャンネルを合わす事の出来る番組の中のひとつ。


時に道行く人々が、すべて笑顔で幸せに見える瞬間がある。時に自分だけが背負っているものが多いのかと「ふいに」寂しくなる時があるけれど。


でもーそんな事はない。日々色んな事があるからこそ、毎日辛い事があるからこそそれを抱えてまで人は懸命に生きている。


すれ違う人、横断歩道を歩く人、ショッピング・モールの家族たち。みんな100%満ちている人なんかいない。見ているだけでは分からないだけ。何かをしょって、何かを受け止めて、それでも笑顔で人は生きている。


番組の中、ふいにインタビューを受けて答える人々の、笑顔からは想像出来ない、それぞれの人生があるように、桜木紫乃の小説に出てくる人物も、みな、なにかをしょってる。


時には社会の片隅にいるような人であったり、表だっては取り上げられない社会で生きている人であったり。


そして彼女の小説の舞台は、決まって彼女の出身地である、北海道。 凍てつく寒さの中の街並みであり、どこまでも続く大地だったり、またそれがいい。


今回の主役は、元ストリッパーのノリカ。本名が、゛フジワラ・ノリカ゛というところも、桜木さんのちょっとしたエスプリが感じられて好きだ。


ストリッパーの物語と最初知った時は、何か業界の喧噪や激しい流浪の物語を勝手に想像してしまったのですが、(これも、こちら側の一種の凝り固まった見方なんだろうと反省)


実は、実に、まっすぐな、踊ることに全てをかけるダンサーたちの物語だった。


足を痛め東京の売れっこストリッパーだったノリカが北海道に戻り、ススキノで、バーを店を開くことになる。


そこで若手のダンサー2人を(ストリップではない)オーディションし、店で踊って貰うことになった。


愛想はなく無表情だが、踊りはプロ級の腕前の、みのりと、愛嬌はあり、客受けする容姿とダンスの上手い、瑞穂の2人だ。後は、訳ありバーテンダーの竜崎。


少ない登場人物の中ひたすらノリカが若手2人にダンスを伝授し特訓する。その2人の成長を肌で感じ、ノリカもまた、もう一度、ストリッパーとしての自己を思いだし、一生を踊りにかけようと決意していく物語。


これだけ、颯爽と、まっすぐな生き方をストレートに表現し描き出すのは、桜木さんの作風では珍しいのではないでしょうか?


そこには大きな事件も、いつもの切なさも少ない。今までの桜木紫乃を期待すると、少し肩すかしをくらうかも知れない。


けれどーこの物語には、変わりに、大好きな事へ挑戦していくすがすがしさがある。


ストリッパーとしてプロ意識を持ち、色気だけを求めてくる観客でさえ、最後はノリカの伸ばした足の動き、恍惚の表情、そして徹底したダンスにむしろ釘づけになる。そこには彼女の本気と徹底した努力があるのだ。


本を読んで改めて勉強させて貰った気がします。どんなことであれ一生懸命、取り組む姿は美しいんだと。その価値は自分ひとりのものであっていい。好きか嫌いか。やり抜くか、挫折するか。失敗したらまた違う道を探せばよいのだ。


ブロードウェイのダンサーだろうが、東京のストリッパーだろうが、変わりはない。キラキラと光るスポット・ライトを浴びる彼等彼女を見て情熱に感化され、漲るエネルギーに触発され、「癒され」そして「明日も頑張ろう」と希望を観客が持って帰っていく。


まさに「生きること」へのつながりだ。


桜木紫乃は、私達にそういった「ささいな、でも大きな勇気」を与えてくれる作家です。




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2017/02/09 (Thu) 20:16 | EDIT | REPLY |   

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