『ジョイランド』 スティーブン・キング 青春のあの頃に残る切なさとノスタルジー

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ジョイランド (文春文庫)ジョイランド (文春文庫)
スティーヴン キング Stephen King

文藝春秋 2016-07-08
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海辺の遊園地、ジョイランド。彼女に振られたあの夏、
大学生の僕が、そこで出会った仲間や大人たち。
僕は幽霊屋敷で過去の殺人、遊園地での殺人鬼がいることを知る。
もう戻れない青春時代の痛みと美しさ、
キングの筆が冴え渡る!感涙必至の青春ミステリー。



舞台は、1973年。
「歓喜の国」 = 「ジョイランド」
ディズニー・ランドみたいに広くなく
でも、公園よりははるか大きい夢の遊園地。

遊園地って楽しいけど、キングの世界にかかると
どことなく、万華鏡のような世界に飛び込む楽しさと不思議さ想像出来る。

そこで、バイトすることになった一人の大学生。
どってことない、感じが良い、誰しもの隣にふっといるような青年。

大好きな女の子がいるのに
もうすぐ、その子にふられそうな気配がする
その、誰しもが一度は経験する、強烈な予感。

人生、初めての「失恋」って、みんな覚えてますよね。
目の前から、その人が消えてしまうかも知れない恐怖。
「死」とは違うけれど、あの頃の青春期にとって
それは、それと同様なほど、受け止めたくない真実。

そんな胸が切なくなるような想いを抱えながらも
「ジョイランド」で、自分の将来の為、四苦八苦しながらも働くその彼は
まだまだ、未熟だけれど、一生懸命。

みんな通りすぎた道ではあるけれど、青春の真っ只中。
風変りで一癖も蓋癖もある、おかしな先輩達。
何もかも信じられそうな仲間。
キャラクターのぬいぐるみを被って、暑さで絶句しそうになりながら、
いつのまにかお客さんに喜ばれるのが嬉しくなっていく日々。

そして、そこで出会った、病気を抱えた1人の少年と、その美しい母親。
謎に満ちたミステリーと、それらの幾つかがクロスしていきます。

ホラー要素もあるミステリーではあるけれど、
その要素はむしろそれほど強くなく
誰しもが若き頃、経験する、憧れ、共鳴、悲しさを
もうすでに大人になった主人公が、
あの頃を振り返る青春小説といった、趣。

この青年と、そして、その病弱な少年と母親との幾つかのシーンの美しいこと。
情景も、交わす会話の幾つかかも、もう二度と帰らないから思い出だからこそ
読んでいて、涙がじわっと湧いてくるようでした。

年齢を重ねると、遠く過ぎさった過去。
そして、今はもう逢えない人達をふっとした瞬間に思い出し
どうしようもなく、胸が締め付けられることがあります。

私も、そんな想いにかられる事がホント多くなりました。
若い時は、とっくに忘れていた過去のことが、まるで昨日のことのように
懐かしくて、懐かしくて、ノスタルジーが強烈に蘇えるのです。

それが、もう決して変えられない過去であるからこそ
あの頃の自分の抱いた感情、「ときめき」や「悔しさ」を
とことん、いとおしくなる。

そして、全てがもう取り戻すことが出来ないからこそ
涙が出るほど、もう逢えない全ての人達を懐かしく思うのかも。

アメリカの小説には、そういう類のものが多いように思うし
中年になっても昔を慈しみ、アメリカのたどった歴史と重ねて
自らを思い起こす人達がたくさんいるようか気がします。
過去を懐かしみ、尊いと思うことは、回顧主義なんかじゃない。
誰しもが、自由に持てることで出来る「宝物」だ。

キングは、やっぱりいいなあ。
これは、大御所スティーブン・キングが、
あえて、ミステリー専門のペーパー・バックから
オリジナルで刊行されたものとのこと。

彼にとったら、自分にとっての小休止。
過去に想いを寄せる為、書いたものかしれない。
決して超大作ではないけれど、
むしろ、読み終わってから、じわじわくる
何度でも読み返したくなる本でした。



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