「過ぎ去りし世界」デニス・ルヘイン また新たな傑作を生み出したルヘイン

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過ぎ去りし世界 (ハヤカワ・ミステリ1906)過ぎ去りし世界 (ハヤカワ・ミステリ1906)
デニス・ルヘイン 加賀山 卓朗

早川書房 2016-04-07
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第二次世界大戦下のフロリダ州タンパ。抗争のさなかで愛する妻を失って以来、元ボスのジョー・コグリンは、ギャング稼業から表向きは足を洗い、一人息子を育ててきた。だが、そんな彼を狙う暗殺計画の情報がもたらされる。いったい誰が、何の目的で?
組織を託した旧友のディオンや、子飼いのリコらが探っても、その真偽すらつかめない。時を同じくして新たな抗争が勃発し、かろうじて平和を保っていたタンパの裏社会は大きく揺れ動く……変わりゆく社会の裏で必死に生き残ろうと足掻く男たちの熾烈な攻防を力強く描く。


ただ、ただ、素晴らしい一級作品。 


作家デニス・ルヘインはまた新たな高みに昇ったと思います。


表向きは足を洗ったと言っても、間違いなく主人公のジョーは暗黒の世界で血と抗争の中で生きている残酷極まりないアンチ・ヒーロー。


ただ、母親を失っている、心から愛する1人息子にだけは、己の「本当の姿」だけは知られたくない。


彼は自己を正統化しようと、もがき苦しみ、幻影まで見るようになる。あれは、幼き日、、まるで幻のような自分?過去に自分が手をかけて殺してきた人々へのレクイエム。


「自分を誰かが狙っている」と、知った時、彼は必死に取り戻そうとします。


明日、いや、1分先にでも失うかも知れない自分の命を。己を守る為。ファミリーの為。息子を生涯絶対1人にさせたくない思いの為に。

ルヘインは、崇高な二転、三転するサスペンスを盛りこみながら裏切りと愛に満ちた、一大抒情詩を、時に美しく詩的にー無慈悲なまでに残酷な描写を書き綴ります。


「ゴッド・ファーザー」もそうだけれど・・・

何故、私達は、決して許されることのないこの暗黒の世界に生きている彼等の生きざまに目を奪われ、物語にこんなに心を持っていかれてしまうのだろう。


最後の章から、数えて、二章目。


そして、最後の章。


ラストへ向かう、その一行、一行が美しすぎる程、はかなく、悲しく、、読んでいて心が締め付けられるようだった。


「過ぎ去りし世界」・・・


ジョーにとって、それは、少年時代家族といた日々、もう逢えない人々、愛していた女性、そしてどこかで行き違ってしまった道だったのかもしれません。


本作は、コグリン一家シリーズと呼ばれ長男ダニーが主役だった一作目「運命の日」。(1920年代を舞台とする、歴史超大作)そして、今回の三男ジョーが主役になっている二作目「夜に生きる」が、すでにあります。

「過ぎ去りし世界」は、二作目の「夜に生きる」を先に読むと、さらにジョーの生きた道筋が分かり胸熱くさせることになるでしょう。


個人的には、この三作目が最も良かったです。


まるで、映画「ゴッド・ファーザー」、特に映画でいうと裏切りの苦悩を抒情的に描いた「パートⅡ」に近い感じ・・・


デニス・ルヘインの作品を読むと、いつも加賀山さんの翻訳の素晴らしさもさることながら、実際の原書で読んだら、どんな素晴らしい単語と流れるような文章で書かれてあるのか、と本当に憧れてしまう・・(といっても、英語力散々な私には読めないのですけれどトホッ)


デニス・ルヘインは、やはり我々のような海外翻訳本、エンタメ大好き人間たちにとって特別な作家です。



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