「犬の力」 巨匠ドン・ウィンズロウ 麻薬カルテルをめぐる火の粉のような超大作!!

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血みどろの麻薬戦争に巻き込まれた、DEAのエージェント、ドラッグの密売人、コールガール、殺し屋、そして司祭。
戦火は南米のジャングルからカリフォルニアとメキシコの国境へと達し、苛烈な地獄絵図を描く--。
内容(「BOOK」データベースより)



「犬の力」 ドン・ウィンズロウ


やっと、やっと読むことが出来た!


読み終えることが出来た、というべきでしょうか。



すごかった。こんな恐ろしい世界が今、現実にあるんだろうか!?


日本で普通に生活していると、ほとんど知り得ずにきたことでした。想像を遥かに超えた、火の粉のような怒りや、狂った憎悪にまみれた世界。



ずっと、読みたいと思っていた。



なかなか機会が、なかったのですが、今年に入り数々のメキシコの麻薬組織(カルテル)を題材にした「映画」などが公開されたのもあり・・・


また、この作品の続編「ザ・カルテル」はアメリカのamazonで1000近い、相当な絶賛のレビュー数を集めており、「これは読むならいましかない」と思い、読み始めたのです。


読み終えた後、しばし、興奮と、それまで読んでいた熱から溶かれたように本の表紙を眺めながら、ボーッとしてしまった。


たっぷりの読み応えある大作を要約読み終えた脱力感。


「なんなんだ、この悪に満ち満ちた世界は!?」というショックに近い感覚。


スケールの大きさ。「別世界」に連れて行かれた。


メキシコの麻薬組織(麻薬カルテル)を巡る、メキシコ系アメリカの捜査官アート・ケラー。


メキシコの麻薬カルテルの帝王の後継者の2人のアダンとラウルの2人の兄弟。それとは別に、アイルランド系の、のちに非常な殺し屋になるカラン。


それらを取り巻く様々なファミリー達、社会、駆け引き、絡む、それぞれの家族。政治、無残な殺し合い、悲しみ、怒り、憎悪、いにしえの愛。


そして、キーポイントになる「美しき女」・・・


様々なしがらみと関係が書かれます。


正直、上巻の半分までは読むのが苦痛でした。


なにしろ、出てくる話は、麻薬、麻薬、また麻薬ですから・・。


主人公のDEA捜査官であるアート・ケラー。


彼と麻薬カルテル・ファミリーの帝王との胡散臭い駆け引き。なんとなくしっくりいかないまま話は進んでゆく。


それからーこの小説は、私が今まで読んできた「海外ミステリー」の小説とは文体がかなり違っていた。


最初の方は、ほぼ全編を通して「-した。」「-する。」「-だ。」といった趣で、人物の感情的な思いや、抒情的な部分がほとんどない。


例えはデニス・ルヘイン、マイクル・コナリー、ウィリアム・K・クルーガーなど諸々の文体から溢れ出る登場人物達の感情のしびれるような表現や伝わる苦しみが、この「犬の力」にはあまり感じられなかった。 


処が、、、である。


この話に中盤から惹き込まれるとテンポが早く、読んでいる者もいつのまにかこのリズムに慣れてくる。


そこからは、もう、この狂った麻薬カルテルの尋常ではない世界に気が付いたら、どっぷり浸っていたのだ。


マフィア映画で言えばコッポラの「ゴッド・ファーザー」がバイオレンスと愛と抒情的な部分で見事に一体化していたとすると、こちらは、スコセッシの「グッド・フェローズ」の方に近いのでぱないかと思う。


個人的には、230ページを超えた辺りから「ググッ~ッ」と惹き込まれて。


捜査官アート・ケラーにも家族がいる。妻は、自分の夫がどんなに危険な仕事に従事しているか分かっている。辞めて欲しいと心から願っているがアートは、決して「辞めない。辞められない。」(この辺りから、話はぐんと深くなり、読者を手放さなくなってきます。)


なぜなら、彼の使命が「巨大なメキシコの麻薬カルテル」を潰すことだから。


自分の部下をそのマフィアに殺された事により、アートの怒りは爆発する「火の粉のように」


ましてや、その危害が、愛する家族に起こったとしたら、、勿論、そんな訳には決してゆかない。させるわけにはゆかない。


アートの憎しみは、倍増されて麻薬カルテルとの想像を超えた攻防戦となります。


しかし、その思いは麻薬カルテルのマフィア達もおなじだ。


自分のファミリー、兄弟、愛する女、巨大な金、それらを守るならどんな残忍な手段でも、相手を殺し、時には裏切者をこれでもかと無残に追い込んでいく。


まさに、血の抗争の始まる。


ともかく、相手を殺す時の描写が無残で凄まじい。


これは、ニューシネマの「俺たちに明日はない」や「ゴッド・ファーザー」や、それらを引き継ぐ昨今のビートたけしの映画などにも見られる物と一緒。


「殺された」瞬間、「ううっ」とも「痛い」とも言わない、苦しまない。


ただ、打たれて、そこに血が広がる。それで終わり。


まったくリアルで、そこに情は一切かけらもない。 冷酷で、非常。


この作品にも、過去のマフィア映画に出てきたかの如く悲鳴をあげたくなる描写が多数出てくる。



要はみんな狂ってしまっているですが、もうそれが彼等の美学なのだろうか



「上巻」の最後を読み終える時、心臓がバクバクした人は多かったと思う。


ところが・・・下巻になると、更に抗争は大きくなる。


1ページ。1ページ。誰が裏切るのか、誰が正しいのか、誰が殺されるのかページが止まらなくなってしまう。


もはや、主人公のアートだけでなく、マフィア側のアダンにさえ我々読者はなにかしらの感情を抱いてることに驚いてしまう。


生粋の「悪」なのに、アダンは我々と同じ苦悩を持ち、「愛」を懐からこぼしたくないと思っている人間だから?


そして麻薬カルテルの巨大組織の中で、みなが圧倒的な力を及ぼすのに何故か、この作品のキーパーソンになる「1人のとてつもない美女」に皆、翻弄されてしまうんです。


そこに、血にまみれた「抗争」の中に、ひとつだけ輝く幻想を、その女に中に、「叶わぬ夢」を見るからなのも知れません。


読み終わった後、著者の熱の籠った、モノスゴイ作品だと思いました。


ー同時に、この小説に書かれている事は、どれだけ真実に近くどれだけフィクションであるのか、私はそれまで、無知だった世界なだけに知りたくなり・・なぜなら、アメリカ人作家が、小説の中とは言え、、、


これだけ「メキシコ」の巨大な悪事を書いたとしたら、、、たとえフィクションであっても、問題にならないのかと心配してしまったくらいだからです。


けれど、少し調べたけで、とんでもない実情が分かってきた。「犬の力」があながち、フィクションでもないと分かって二度驚いてしまう!


メキシコ警察と麻薬カルテル抗争で、2011年の五年間で、既に4万7,515人が亡くなっているといいます。


「メキシコの麻薬カルテルがどんな物なのか。そしてアメリカとの問題」



今年、日本でも公開された「カルテル・ランド」の予告編。 


アカデミー賞でも絶賛されたドキュメンタリーだ。「ゼロ・ダークサーティー」のキャスリン・ビクローが制作総指揮。


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こららも、公開されて話題になった、正にメキシコとアメリカの国境沿いにおける凄まじい抗争を描いた「ボーダー・ライン


主演のベニチオ・デルトロの苦悩に満ちた顔を見るだけで内容が想像出来ます。


そんな折、大統領選の共和党候補のトランプ氏が、自身の抱えている集団訴訟を起こされている件でこんなニュースが入ってきた。


「この裁判官を担当する判事がメキシコ人であり、非常に不公平な、信じられない判決を出してきた。」と。


さすがにこの発言には、人種差別だと共和党員からも非難が続出して、支持率にも影響してきたという。アメリカとメキシコの数年にも渡る根深い関係が、ここでも垣間見れた気がする。


わたしが無知だったゆえ「犬の力」を読んで、世界にはこういう問題もあるのかと様々なことを少しだけだが学びました。


改めて、色々、、、あるけれど、やはり日本に住んでるという事は、つくづくラッキーなことなのかも知れない。
世界には、まだまだ計り知れない恐ろしい深い問題が山積みのようです。

この「犬の力」 リドリー・スコットと、念願のオスカー受賞を果たした、レオナルド・デカプリオがタッグを組み制作される(制作中?)という記事を見ました。


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主演のアート・ケラーにレオはピッタリだと思うけれどメキシコ系という事で髪は黒く染めるのだろうか。


それにも増して、俳優なら、アダン、ラウル兄弟のどちらかは俳優にとったら最大のビッグ・チャンスとも言える個性的な役柄だろう。


極悪非道、血も涙もないのに、美貌と男の色香で全てを滅ぼそうとするファビアン・マルチネスも強烈なキャラクターだ。
そして、誰しもが虜になる美しき女、ノーラ・ヘイデン役は・・・?


などなど、勝手にキャスティングにまで思いをめぐらせてしまいます。


さあ、今度は、待ちに待った、もう一つのマフィア・サーガ三部作最後のデニス・ルヘインの「過ぎ去りし世界」が待っている。
読みたい本がたくさんあるという事は、本当に本当に幸せなことですね。




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