「眼には眼を」松本清張にも影響を与えた究極の復讐トラウマ映画!

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「眼には眼を」1957年製作/フランス 原題:Oeil pour Oeil


恐ろしい復讐劇だ。


フランス映画の社会派「洪水の前」のアンドレ・カイヤットが、アルメニア生れの青年作家ヴァエ・カッチャの原作をとりあげた復讐劇。撮影は「歴史は女で作られる」のクリスチャン・マトラ。「陽はまた昇る」のジュリエット・グレコが吹替えで一曲歌っている。主演はドイツ出身の国際俳優「眼下の敵」クルト・ユルゲンス、イタリア出身「大いなる希望」のフォルコ・ルリほか


シリアの病院に勤務するフランス人医師ヴァルテルは、一人の男につけまわされる。その男ボルタクは、自宅での診療をヴァルテルが断ったため、妻を失っていた。いきがかりから、ボルタクと共に砂漠を通り、ダマススへ向かうヴァルテル。砂漠で展開される復讐の罠、息の詰まる心理ゲーム、そしてその先にある人間の実存に迫る。



「眼には眼を」…この言葉のストレートな響きにはただ事ではない無限の恨み、メラメラと憎悪を募らせる=「執着」が垣間見え、背筋がゾゾッとしてしまうのはわたしだけではないでしょう。


その「復讐心」をいまでいう"イヤミス"のごとく、とことん露骨に描ききった映画「眼には眼を」!


評論家や映画ファンには長い間忘れられていた作品。表立って話題になることはなかったのが近年口コミで広がり数年前初DVD化。いやあ~不協和音がブンブンブン~復讐映画ココに極まりけり!


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シリアの小さな都市の病院で働くフランス人医師ヴァルテルは腕の良い医師で信頼されている。ただある一夜の出来事が彼の運命を大きく変えてしまう。


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ヴァルテルは1日の仕事を終え部屋で休んでいた。ふと窓を見ると一台の車が病院の前に止まった。救急患者のようだ。


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しかしー勤務を終えている彼は「ここじゃなにもできん。たぶんー腹痛がなにかだろう。もっと大きな病院に行った方がいい」と断り、電話で終わらせてしまう。


翌日ーヴァルテルは若い宿直医師から昨日急患で来た患者が亡くなったと知らされる。患者は夫婦で亡くなったのは妻だった。ヴァルテルが診察を断わったため、大きな病院へ向かった夫婦は車が途中で故障。夫は数時間妻をおぶり病院に着くもすでに遅かった。しかもー妻は腹痛ではなく大病だったという。


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この悲劇が恨みをかい、ヴァルテルの運命を壮絶に変えてしまうのだ。


ココで、、「復讐劇」と聞いて、、松本清張の傑作小説『霧の旗』が真っ先に思い浮かぶ人も多いハズ!


九州の貧しい家庭で細々と懸命に生きていた兄と妹。ある日ー教師だった兄が資産家の家に押し入った強盗殺人の濡れ衣を着せられてしまう。無実を信じる妹桐子は上京。東京のある有名弁護士に「兄の弁護をしてくれ」と必死に頼み込む。だがー弁護士は忙しく、また高額な弁護士料をこの貧素な娘が払えるとも思えず断り追い返してしまうー。結局ー兄は無実のまま「死刑」に。妹桐子はその飽くなき復讐を弁護士に向けていくという話、、


初映像化は倍賞千恵子、70年代には山口百恵版も映画化。わたしは両方とも見ているが、小説が真犯人探しミステリーと交錯する物語に対しー映画はあくまでも桐子の復讐劇に焦点をあてていた。それ以外にもいくども映像化されているがやはり中心は『復讐』だった。人への恨み、怨念は他人事とは思えず、サスペンス人間劇のあらゆる基盤となるものだからだろう。


そしてーなんと今回調べてみたら、松本清張『霧の旗』は『眼には眼を』から大いにインスピレーション、触発を受けて書いたものだという!


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昨夜の経緯をなにも知らない若い医師から「あなたが診ていたら誤診はありえませんでしたよね」といわれ、、ヴァルテルは分が悪くなりその場を立ち去る…。


たしかにー「霧の旗」「眼には眼を」どちらも復讐される側とする側、、主張、言い分、行動に正義感といえどモヤモヤさせられ、霧がかったような暗澹たる気にさせられるところもおなじだ。


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ー次の日からヴァルテルの周りには不可解なことが起こりはじめる。無言電話。不審な尾行。窓を開けると駐車してあったのは、あの患者の車!


それらは妻を亡くした夫=ボルタクという男の仕業だった。酒場で飲んでいると遠巻きに男の姿が見え、ヴァルテルの代金まで払ってくれる。だが金を返そうと追いかけると再び逃げてゆく。


ようやくボルタクの乗った車を見つけると彼はアラビア人集落ラヤという貧しい村に住んでいた。なにも語ろうとしないボルタクはガソリンが切れ帰れないヴァルテルを自宅に泊まらせるが、案内された部屋は亡くなった妻の個室。恐怖と後悔におののくヴァルテル。


だがーヴァルテルは、さらに奥地に住む病人の治療を頼まれ、前回の治療を拒否した贖罪のためか、、その最果ての村にまで赴いてしまう、、


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しかしーそこは想像を超えた地域。言葉の通じない村人たち、白人を憎悪する集団もいた、、


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乗って来た自家用車のタイヤは盗まれ動かない。電話もテレビもない、街に向かうバスもいつ来るか分からないという、、、、


どうでしょうー??こんな状況が身におこったら、かなーり恐怖だ。もちろんスマホなどない時代である。


異国の地にひとり取り残された映画といえば、、90年代デビット・フィンチャーが監督、マイケル・ダグラスとショーン・ペンが兄弟役で共演した『ゲーム』という悪趣味全開?な作品があった。言葉も通じずパスポートもない、ないないづくしの見果てぬ国にM・ダグラスがひとり置いてきぼりにされ…観終わったあと友人とショーン・ペンに怒りましたよ笑「おいおい、罰ゲームにしてはひどすぎるでしょー」と。


けれど、ゲームには終わりがある。「復讐劇」では人間の感情は絡まり続けほどけようがない~永久にジ・エンドはなし。


ヴァルテルはついに怒りのあまり、商用でこの村にいるボルタクに本音で話し出す。


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「いったいなにをしたいんだ。わたしはあのとき休みだった。なにをしても手遅れだったのだ」と…延々と自分を正当化する主張を繰り返すヴァルテル。ボルタクはなにも言わずただ聞いているだけ…。


村にいてはラチがあかないと悟ったヴァルテル。すこしの水と食料を持ち、村人の忠告も聞かず歩いて街に戻ることを決意。どれだけ目指す町が遠かろうが、照り付ける太陽がどれほど厳しいことも知ってか知らずか…。


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道すがら商談中のボルタクがいた。彼から「ダマスクス町に行く近道を知っている。一緒にくるか来ないかはあんた次第だ」といわれたヴァルテルは、仕方なくボルタクと一緒に街を目指すことにしたのだが、、、、、


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しかしー究極の恐怖はこれからだった…ゆくど、ゆくども町など見当たらない。広がるのは果てしない砂漠と草木。飢えて散った動物たち、、灼熱の地。


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二人は壊れかけのゴンドラに乗り山から山へ。コワイー!


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ひたすら歩き続けるも水筒の中身は尽き、食べ物もとうにない。喉はカラカラ。眠りにつこうとすれば「コヨーテが襲いかかるから寝るな」とボルタクに注意される。空腹、寝れない、灼熱って、もう地獄としか。


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信じては進むも、、、どこまでいっても砂漠だけ。井戸があるとボルタクの示す方に行ってみれば、干からびた底だけ。…


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死と向かいあったとき、、ヴァルテルは気付いた。コレはオレをハメるための罠だったのだ! オレへの復讐はただ殺すことじゃない。苦しませて息耐えさせることだったんだと、、、


ついにヴァルテルはボルタクに叫ぶ 「オレを殺せ。ケリをつけろ!!」…


ところが…復讐は終わらない。二人がいく最果ての旅はまだまだ続いていく…という、、ラストまで見るとさらなる絶望が。憎しみもココまでくると狂気と紙一重。人が人を裁くことはできるのか。作品は問いかける。


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50年代シリアが舞台というのも異国情緒たっぷり。スロースタートから徐々にめくるめくミステリーの世界へ(撮影地はスペイン)最後は恐怖のドン底。そこには復讐劇というだけでなく権力のある医者と貧困層の対比も根本に流れている。


見ていて気が付かされる。クルト・ユルゲンス演じる医師は一場面だけ相手のボルタクに「なぜあの時自分はきみの妻を診察できなかったか」を説明する。その言い訳の傲慢さ。たしかに時間外だった。自分が見ていても手遅れだった。


だがーボルタクは…たった一言。医師から聞きたかったのではないだろうか…「すまなかった」というこころからの詫びを。


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だが復讐を企てるボルタクもどこか屈折している。面と向かい語らない、追えば逃げ、逃げれば近づく。彼の行動にも終始戸惑いを抱くばかり。面と面を突き合わせ話をすることがいかに重要であるか。砂漠で途方に暮れ惑う二人の姿は…復讐の枠を超えてもはや意地の張り合いのよう。


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この作品ー名匠アンドレ・カイヤット監督ながら本国フランスではあまり評判にならなかったという。ムチャぶりすぎる描き方が受けなかった要因なのではとも思う。むしろーこのあくなき心底に迫る執着心は面と向かい表現することが苦手な日本人向きなのか。松本清張が触発されたのもなんとなく頷けるのだ。


トラウマ必至~機会あれば作品をご覧になってみてください。恐怖とともに、なにか得体のしれない理不尽さを感じるはずです。






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Comments 6

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ギターマジシャン  
眼には眼を

この作品は知らなかったのですが、タイトルからしてものすごいですし、執拗な復讐劇は現代にも通じるところがあり、「世にも奇妙な物語」に出てきそうですし、久々に地上波登場の草彅の戦争シリーズにも通じますね。

延々と砂漠や山岳を彷徨うところは、設定が逆で復讐の返り討ちとでも言えば良いのか、松本清張の「黒い画集」の「遭難」を思い出しました。

2023/01/15 (Sun) 08:58 | EDIT | REPLY |   
ローリングウエスト  

初めまして!ローリングウエストと申します。新潟県柏崎生れ川崎市在住、65歳を迎えた中年オヤジ(旅好き・歴史好き・洋楽ロック・サッカー好き)でございます。洋楽ブログを探索していたらビートルズ好きとのプロフィールが目に留まり訪問させて頂きました。小生は60年代末~70年代ロックファンですが、もしよろしければ交流させて頂ければ幸いです。

2023/01/15 (Sun) 13:01 | EDIT | REPLY |   
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m-pon5  
>眼には眼を

>ギターマジシャンさん

わたしのつたない文章からどこまでこの映画の不気味さコワさが読んでくださる方に伝わるのかなあ~と心配だったのですがギターマジシャンさんが的確にとらえて下さってホントにうれしかったです。ありがとうございます。

清張の「遭難」は未読なのですが、つい最近おなじ「黒い画集」の中の「あるサラリーマンの証言」小林圭樹主演の映画を観る機会がありました!(みうらじゅん氏の一押し清張作品だそうですv)これがまたサラリーマンがどんどん追い詰められていくというコワイお話で…「眼には眼を」と一緒でサスペンスかホラーか~清張もさまざまな分野から創作のインスピレーションを受けていたのでしょうね。
昔は本でしか分からなかった海外の映画情報もいまはネットや様々なメディアで知ることができ、フツウに観られるようになりました~ほんとに幸せなことだなぁって思います^_^

2023/01/15 (Sun) 22:40 | EDIT | REPLY |   
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初めまして♪

>ローリングウエストさん
初めまして♪
こちらこそブログにお越しいただきコメントありがとうございます

ローリングウエストさんのお名前はmoondreamsさんのブログで拝見しておりました。わたしも基本、洋楽&洋画、昭和カルチャーが大好きです^_^70年代後半から音楽ではビートルズ、洋画は映画雑誌がスタートで新しい世界が開けました~。60'70'ロック&ポップスイイですよねー♪ローリングウエストさんはさまざまな分野にもお詳しくて人生の大先輩ですね。こちらこそこれからもよろしくお願いいたします。

2023/01/15 (Sun) 22:57 | EDIT | REPLY |   
ローリングウエスト  

こちらへの初ご来訪ありがとうございます!女性シンガーがお好きなのですね!小生、80年代洋楽は今までは少な目の掲載でしたがこれから徐々に増やしていこうと思っています。80年代はやや不得意なので情報交換で勉強させて下さい。洋楽ブログメイトにお気に入り登録させて頂きましたのでこれからお付き合いよろしくお願いいたします。古い記事もじっくり読んでみて下さい。最新記事にも是非遊びに来られて下さいね~!

2023/01/17 (Tue) 20:13 | EDIT | REPLY |   
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m-pon5  
No title

>ローリングウエストさん

こんにちは♪
コメントありがとうございます

男性ヴォーカリストはもちろん女性シンガーもスキですね~歌が上手くその人の個性が滲み出ていたら同性としていよいよ虜に^_^こちらこそローリングウエストさんのブログであらためて数々の名盤に浸りたいと思いました。メイト登録までありがとうございます<(_ _)>こちら映画や音楽など、とりとめのない記事ばかりですがゞよろしくお願いしたします。そちらの新旧記事これからも楽しみに拝見させていただきますね^^

2023/01/18 (Wed) 16:14 | EDIT | REPLY |   

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