「トップガン マーヴェリック」レビュー 伝統と夕陽とロマン。全てを兼ね備えた一級品

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「トップガン マーヴェリック」


トム・クルーズを一躍スターダムに押し上げた1986年公開の世界的ヒット作「トップガン」の続編。アメリカ海軍のエリートパイロット養成学校トップガンに、伝説のパイロット、マーヴェリックが教官として帰ってきた。空の厳しさと美しさを誰よりも知る彼。訓練生たちはそんな彼の型破りな指導に戸惑い反発する。その中には、かつてマーヴェリックとの訓練飛行中に命を落とした相棒グースの息子ルースターの姿もあった。ルースターはマーヴェリックを恨み、彼と対峙するが……。(映画com)


2022年製作/131分/アメリカ
原題:Top Gun: Maverick



冒頭のオープニング。ミラマー海軍航空隊基地。管制塔にかかる夕陽。 


テーマ曲、デンジャーゾーンが爆音とともに流れだしたとたん、、!


ザーッと走馬灯のように頭の中の記憶が蘇る。ゴゴォーッと席の周りに風が吹いて(実際は風なんか吹いていないのに…)自分自身が36年前『トップガン』を劇場で観ていた時間に、椅子ごとタイムスリップした感覚に襲われてしまった。


魂が総毛立つ。時空を超えるってこういうことなのか。夢か幻か…いまの自分じゃない、あのときのわたしがいて、目の前のスクリーンを観て涙ぐんでいる。


長い間、映画を見続けてきて、、こんなことは初めて。


当時『トップガン』を鑑賞した方たちは少なからず、ファーストシーンから同じ体感をしたに違いない。80年代あらゆる映画がひしめき合っていたなか、『トップガン』の印象がなぜ、これほど脳裏に色濃く鮮やかに焼き付いているのか。ー『トップガン』を観ていたころの何物にも好奇心でいっぱいだった自分ー映画を目にするまで忘れかけていた純粋さ、強烈なインパクトがド迫力で瞬く間に蘇った。


ーこれはトム・クルーズが『トップガン』に駆ける人並み超えた愛と情熱ー60歳を前にしたー映画に挑む死闘。意気込みの集大成。映画魂が貫かれ、昇華を遂げた作品。


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『トップガン』(左)当時のパンフ。強烈な空中戦と白い歯がキラリと光るとびきりの笑顔をもつ若手トム・クルーズ。影響力は世界中を魅了し絶大に。こちら地方での同時上映はモリー・リングウォルド主演『プリティ・イン・ピンク/恋人たちの街角』ハラハラドキドキのスピード感とウットリ気分。どちらも『THE80年代!』ー時代を知りたければコレを見るべし!に相応しい作品。観客は一つで二粒美味しい青春を味わったものだった。


『トップガン』…音楽からファッション、トム・クルーズ。すべてが社会現象に。MTV世代にガンガン響く最新ヒットチューン、トップエリートが乗りこなすF-14A。年上教官との恋~ライバルとの剥き出しの対決。なにからなにまでカッコイイで埋め尽くされていた。いまの若い人が見たら現実感が掴み切れないほどある種、、浮世離れした娯楽作に映ってしまうかも。


ただー『トップガン・マーヴェリック』はそれとも別次元のさらなる高みへ飛行してしまった。続編というのは、なにかしらのオマージュ=敬意が中身に溢れているのは当然なのだけれどー長すぎるかに思える30年余りの時を経て、現在と過去。人生の旅路ともいえる人と人との点と線がガチッと結ばれているー。


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36年前『トップガン』のマーヴェリックと同僚のグース。


いままでー人物たちの行動やシチュエーションの隅々に、ここまで細やかな配慮が行き届いている続編はほかにあっただろうか。ここに至る年数を考えた場合、奇跡のようにも思えて。


教官になったマーヴェリックと若い教え子たちとの空気感の違い、仲間同士であるがゆえのライバル心、自我の目覚め。場面ひとつひつが前作とおなじ道筋。オマージュなのだ。彼らの若さゆえの危うさ、無邪気さ、とんがって、つっ走りそうになっていた姿は、若き日のマーヴェリックそのもの。


その上ー『マーヴェリック』は、アメリカ人が愛して止まない『伝統芸』を見事にぶちこんできた。古い西部劇時代から『スター・ウォーズ』に至るまでの映画の鉄板。ー「友情」と「父子の愛」ーそして「変化」。…人間はいつか変わらなけれはならないという人間の永遠のテーマ。


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まさかーマーヴェリックが親友グースを失った悲しみに、いまもこれほど捕らわれているとは。当たり前だけれど続編が出来るまで知りえなかった。ートムが写真でも抱いているグースの息子であるブラッドショーを直々に訓練することになろうとは!ブラッドショーは父親を殺した原因はマーヴェリックにあると強く思い込み続け、敵対心を持っているのだからより複雑だ、、。


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成長したグースの息子ブラッドショーを演じるマイルズ・テラー。髭の生え方がニクイほど、父親グースを演じたアンソニー・エドワーズの面影を彷彿させ、思わずニンマリ。


実力はあるけれど、いざという時の決断力が備わっていないブラッドショーを叱咤するマーヴェリック。父のことも含めマーヴェリックを憎む彼ー2人が激闘の戦いを経て信頼を取り戻すクライマックスは爽やかな涙なくしては見られない。そしてーブラッドショーと同期ライバルのハングマンとのやり取りこそ、『トップガン』のマーヴェリックとアイスマンの関係そのまま!


アイスマン=ヴァル・キルマーへ対してのトムの深い思いも胸をうつ。二人が対話するシーンでトムがキルマーの前で流していた涙はおそらく演技ではないだろう。当時はわたしの周りにもトム演じるマーヴェリックより「俺は断然、アイスマン派だね!」と言ってる男の子たちも多かった。敵役ではあるけれどアッパレなくらい人を虜にするクールな首席。


ードラマティックな人間模様の展開だけではない。スケールアップした、すさまじい迫力。前作を遥かに凌ぐシチュエーション、展開される空中戦シーンの連続に次ぐ連続には度肝を抜かれてしまう。


徹底的に本物にこだわったトム・クルーズ。空撮にCGは使わない。本物の戦闘機、キャストたちが乗り込み撮影したという。実践さながらのプログラム訓練は3か月に及んだというから信念を貫いている。


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トムクルーズ自身も体験に基ずくトレーニングを強行。自らが戦闘機に乗り込み過酷な訓練まで実地。若手たちが挑んだシュミレートは、戦闘機のGに耐えうる演技をすること。5、6Gで失神するといわれ、訓練は前代未聞の7Gまで引き上げていたという。映画中の訓練、実践と続く飛行シーンの壮絶さはここからきている。


失神手前、白目むく寸前のトムたちや訓練生の表情を見ると生々しく、迫真のリアリティに思わず前のめりで、こちらまで手に汗握ってしまった!


アクロバット死闘に挑み、身を削るような恐れに立ち向かった俳優たちの演技。高度なリアリティ・アクションが単なる娯楽を超えた感動を観客に与えたのだと思う。


物語は基本的にはシンプル。相手国は明確にはされないがー「ならず者」国家とされる敵の要塞を打ち砕くべく、絶対不可能の任務を実行するトップガン=エリートたち。彼らが命がけで峡谷を飛んで空中戦を展開していくーそこに上にあげた完成されたドラマ・プロットが二時間あまり展開していく。これだけでも十分なエンタメ作品のお手本のような気がするのだけれど、スゴイのはそれだけで終わらないこと。


主役マーヴェリックの枯れた男のロマンまで盛り込ませてしまっているのだから、ジーンとしないわけがない。


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前作『トップガン』では完璧なる若さの美しさとクールなビジュアルでキラキラと輝いていた若者マーヴェリック。今作ではなんと優しく柔和になっていたことだろう。


教官としては妥協を許さない怖い者知らずの男。けれどーそれ以外のマーヴェリックは過去の傷と、自己のこだわりを抱えながら、孤独なロマンを背負い一匹狼として人生を走っている。


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ー夕陽の中をバイクで駆けるマーヴェリック。背中には哀愁と寂しさも加味された。大人になった人だけが持つことのできる枯れた情感がなんとも言えず色っぽい。しわも増えたけれど、苦悩が刻まれた面持ちは年齢だけでは測れない男の゛顔゛になっていた。(photo Fashon health)


思わずグッときてしまったーわたしたちの知っていたマーヴェリックも観客たちとおなじように、三十六年間、いろいな思いを抱え過ごしていたんだなあと。同年代のシングルマザー女性、ペニー・ベンジャミンとの愛に対してもー(前作では゛マーヴェリックが司令官のお嬢さんにまで手を出している゛という類の会話中に名前だけ出てくる。道理でー彼女はパイロットたちに理解があるはずだ)ー若いときのように自己中ではない。これからの人生の苦楽を共にするパートナーである。


個人的にはージェニファー・コネリーもナチュラルで良かったけれど、トムと並ぶと彼女の繊細な雰囲気は少しイノセントすぎる気がした。わたしは80年代アイドルでは断然ダイアン・レイン派だったので、熟女となって自然体のイイ女になったダイアン・レインとトムの『アウトサイダー』以来の共演もぜひ観てみたかったような、、これは単なる好みの問題ですね(笑)


真っすぐな生き方もー仕事もー愛もー『トップガン」世代において主人公と観客の思いのすべてが同化してしまう感動的なシンパシーで全編が溢れまくっている。エンドロールの余韻もたまらない。


ー続編の企画が最初にあがった10年前なら、このようなストーリーとは当然ながらまったく別のものになっていたはず。まだまだギラギラした野心に燃えていたマーヴェリック主体のものだった可能性も。ートニー・スコット監督の悲しい出来事や様々な苦難を乗り越え完成した『トップガン・マーヴェリック』はー現在の熟練したトムだからこそーマーヴェリックだからこそ成しえた結晶。



Berlin - Take My Breathe Away theme from Top Gun  全米NO1 ベルリン『愛は吐息のように』と名シーン。 


昨晩バーでひっかけた女性ケリー・マクギリスが、翌日教官として目の前に現れたときの、トム=マーヴェリックの「ウソだろ、、オイ」と隣のグースの方にシマッタ…と顔を傾ける表情が好きすぎて、これだけでご飯何杯でもいけそうです。カッコつけてもまったく嫌味なし。ー若きトム・クルーズの精悍な美形ぶりには改めて見直してもホレボレ~。


『マーヴェリック』にも世代を超えて愛されそうなサントラ曲があったら更に言うことなかった。そこまで求めたら贅沢でしょうか!?


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どこを切り取ってもハリウッド映画。金看板トム・クルーズ。これほどヒーロー然とした作品は他の国ではまず作れない、生まれない。本来『トップガン』自体が超絶に娯楽映画だったのだから『マーヴェリック』も徹底して夢の世界に浸り楽しみ、続編のカタルシスに酔ってしまえばよい。


なにしろ観終わったあと、これだけ万感の想いにさせられたら、拍手、絶賛しないわけにはいかないのだ。


トム・クルーズも歳をとった。我々もおなじように歳を重ねた。間違いなく後世にも語り継がれる稀有の大スター、トム・クルーズ。彼とおなじ空気を吸って共に時代を過ごしてきたことは素晴らしくラッキーなこと。劇場をあとにしながら、その幸せを、とことん嚙みしめてしまった。


30年前ーポール・ニューマンやD・ホフマンの隣で意気揚々と弾け、ベテランからなにかを吸収しようと必死にもがいていた特別にハンサムだった青年は、次世代への若手にその学びを伝えている。時代は回ってるんだと感慨深い。


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笑顔はあの頃のまま。素敵に歳を重ねて。トム・クルーズ伝説はこれからも映画というものがある限り、まだまだ続いてゆきます。



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Comments 2

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ギターマジシャン  
トップガン

ブログ仲間は同年代が多いせいか、あちこちで続編を絶賛する記事が見受けられて、これは是非とも劇場でとおっしゃってますが、出不精かつ腰痛持ちの自分は地上波待ちです・・・。

前作もロードショー公開から3年もたってから、渡辺裕之の吹替え版で見て、遅ればせながら、革ジャンにワッペンをつけようと横須賀の米軍基地近くまで行ったので、数年後にまたグッズを買うことになりそうです。

ネット情報なので詳細は不明ですが、ヴァル・キルマーが出演していると知って、それだけで泣けそうになるのは、オールドファンの証でしょうね。

2022/06/28 (Tue) 19:45 | EDIT | REPLY |   
m-pon5
m-pon5  
>トップガン

>ギターマジシャンさん、コメントありがとうございます<(_ _)>

以前のコメントで、ギターマジシャンさんが『トップガン』フォロワーだった頃の
アツいお話を聞いていたので、ぜひ、ぜひ『マーヴェリック』を劇場で~と
お薦めしたいのですが…なによりお身体が最優先~
映画館の中といっても最近のこの暑さですから、ご無理なさらないのがベストですよね、
こちらのシネコンは幸か不幸か(汗)…郊外のド真ん中でありましてサービス・デー&レイトショー日、『マーヴェリック』でさえ10人程度ゞ…そんな環境に慣れていますから、わたしも身内以外の人が隣に来てギューギュー詰めの映画館では気を遣いすぎてもうムリだと思います~。

作品は、ギターマジシャンさんがご覧になってもきっと大満足されるんじゃないかと。すべては上手くいくだろうって分かっていても俳優の演技や技術のクオリティがそれを上回っちゃっていて決してマンガになってないんですよね。感動を一級の娯楽にしてしまうーこれこそトム・クルーズ映画の到達点!ハリウッドの王道っていう感じでした。ご覧になったときの感想楽しみにしております~!

ここ数日の暑さは異常ですね。夕方18時でも…34℃。昭和の夏が恋しいです。
ギターマジシャンさんもお身体に気をつけて、お過ごしくださいね。

2022/06/29 (Wed) 19:17 | EDIT | REPLY |   

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