バラカ 桐野夏生 早くも今年の最高傑作か

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バラカバラカ
桐野 夏生

集英社 2016-02-26
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今、この時代に、読むべき物語。
桐野文学の最高到達点!


震災のため原発4基がすべて爆発した!警戒区域で発見された一人の少女「バラカ」。ありえたかもしれない日本で、世界で蠢く男と女、その愛と憎悪。想像を遙かに超えるスケールで描かれるノンストップ・ダーク・ロマン! 桐野夏生が2011年夏から4年にわたって、危機的な日本と並行してリアルタイムに連載してきた作品が、震災から5年を経た今、ついに書籍化!
内容(「BOOK」データベースより)


待望の桐野夏生の新作です。


ともかく、驚愕してしまいました。これは大変な小説だと。


やはり、桐野夏生はスゴイと唸ってしまいました。


個人的にはだけれど、篠田節子の「冬の光」と並んで早くも今年の最高傑作になりそうな(むろん、まだ4月なのですが)一冊かという気がしています。


東北の震災を中心に、フィクションとノンフィクションの部分が見事に集結し、これでもかとこれでもかと、という運命を生き抜く、バラカという震災で被ばくした少女を取り巻く物語。


とてもリアルだけれど、どこか滑稽で漫画的で短絡的な人間達の生き様が交差し、1ページたりとも、ページをめくる手を止める事が出来ない。


ストーリーは、東北の震災で原発さながらの地域で働く1人の老人がバラカという少女を拾うところから始まります。バラカは、日本に滞在する日系ブラジル人同士の間に生まれた少女。


何故、バラカはこんなところにいるのか?


そこに渦巻く人間達の業が、また、凄まじいのです。


宗教にすがる者。子供だけが欲しいキャリアウーマン。人身売買。


ホモセクシャル。偽善と本物。原発は、あるべきなのか、なくすべきなのか?


まるで現在の日本の闇を写しているようで、どこがそれは滑稽でクスッと笑ってしまうようなセリフもあり昔の楳図かずおの漫画を読んでるようなどこか現実なのか、そうでないのか、ふわりふわりと、得体の知れない物語に嵌ってしまいます。


また物語に出てくる「カワシマ」という登場人物がともかく強烈なのです。


特に女性なら、この男の顔をや性質をあれこれ読んでいるうち、想像してしまうと思うのだけれど何しろ、浮かんでくるだけで、「消えろ、消えろ」と言いたくなってしまうくらい(´・Д・))


あのアメリカの超ミステリ人気作家ジェフリー・ディーバーの小説にでさえ、こんな奇妙な人物は登場しないのではと思ってしまうくらいのインパクト。


こんな不気味な、生理的な嫌悪感を全部持っているような人物を書けるのも桐野さんの成せる技。


最近の桐野作品では


ハピネス」・・・子供を持つママ友の欲としがらみ


「抱く女」・・・団塊の世代に生きる、あの頃の浮遊感、虚脱感


だから荒野」・・・家庭から、ふっと逃避行したくなった主婦


夜また夜の深い夜」・・・ どこの国だか無国籍で生きる少女の不思議な生き様
・・・などがありました。


しかし、どこか過去の桐野作品と比較してはビリッと感が弱かった気もしていて、何か桐野さんらしくないと読者は過度に期待してしまったり。


(「抱く女」は、あの時代背景が好きな私自身にはとても好きでした)



この、「バラカ」はそんな読者をも、「これぞ桐野夏生」!と、ほぼ納得させてくれる最高の桐野作品のひとつとなったのではという気がしています。


震災をモチーフにした物語は、様々な作家が書いておられますがこの恐ろしいが、どこかユーモアもあるナンセンスな切り口こそ彼女しか書けない、それこそ桐野夏生文学の最高峰なのだと思います。


そして、決して読後感が悪くないのが何より救いでした。


本を閉じた時、きっと我々それぞれが生きる2016年という現在をもう一度考えることになるのではないでしょうか。


必読の一冊。




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