読書秋近しシャーロック・ホームズ~夏目漱石先生と三島由紀夫 活字愛よ どこまでも

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いま毎週BSプレミアムで『シャーロック・ホームズの冒険』が放映されています。 (1984~94) 全41話


原作のホームズは大好きでありながら、ドラマ版はいままで見るチャンスを逃していたので、初見の機会を得られたわたしは嬉しくて楽しみでー。


筋金入りのファンの方やシャーロキアンと呼ばれる世界中の人たちにとって、このドラマ版ほど長く愛されているものはないという評判はもちろん知っていた。なのでー毎週放映されるたびチャンネルを合わせ、時代背景を忠実に再現したセットの見事さに溜息。原作と重ね合わせながら「あー、そうだ、そうだった!」と頭の中で場面ごとの記憶を整理したり、ワクワク感が止まらない。


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『シャーロック・ホームズ シリーズ』新潮文庫


様々な出版社からシャーロック・ホームズシリーズは発売されているけれど、わたしはやはり一、二もなくホームズは新潮社。


一冊何気なく手にとったシャーロックが新潮だったし、翻訳も発売当時の延原謙さん。時折古く思える訳さえユーモアも気品も香り立つようでスゥッ~と頭に入ってくる。表紙が一貫されているのも良い。文字と絵柄が浮き出た感触も大いに満足!


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ホームズ演じるジェレミー・ブレッド  ワトソン初代のデビッド・バーク


露口茂さんの (太陽にほえろのヤマさんだぁ~と違うところでときめいたりw) ちょっと籠った声色がどこか神経質そうでピリッとしたホームズ像にピッタリ!ジェレミー本人の声はというと、さすが舞台でも磨きあげた演技力。キレキレで決めるところはキメタるぜ!!的。露口さんとはぜんぜん個性が違う。それも吹替えゆえの絶妙な「覆しーくつがえし」の魅力。


お金と精根をかけている、、ドラマ・シャーロック・ホームズ。同じく放映している『ポアロ』といい。原作をとことんリスペクト。


きめ細やかに構成も脚色も配慮され役者たちもグッ!と抑えた演技。こういうドラマがひと昔前の日本にもただあったハズだけれど汗…


それにしても、、こういう良質なドラマがあると、活字ファンは微妙に困ってしまう、、。


じつはクリスティーも少しずつ文庫をコンプリートしつつあるので、『ポアロ』も録画したものの、この場合は原作を先に読みたいものに関してはドラマを先に観たくはないし。卵が先か鶏が先か…こんなウレシイ戸惑いなら大いに迷って迷いぬこうと、、いまだ漂い中。


そんな中ー世間でもテレワークの影響か自宅時間が増え、巷でも本スキさんが増えつつあるとか!?


わたしの読書愛も相変わらず冷めやらず。ー最近、とくに気になった本や、もっと早くきづくべきだった!と唸らせてくれた文豪本やエッセイなどをいくつかここに紹介を~。


たまたまー数か月まえ。本屋さんに。Amazonや図書館利用が続いていたので久しぶりのこと。


すると、店頭に入るやいなや鮮やかな文庫カバーたちが目に留まった!


いったん自宅に帰ったけれど、どうも気にかかって、、。


調べてみたら、、KADOKAWA 角川が、老舗のてぬぐい屋さんとコラボ。『かまわぬ』シリーズ。日本文学の名作のいくつかの表紙をお店の限定カヴァーで発売しているものだった。


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角川名作文庫かまわぬカヴァー本たち!  思わず惹かれ、気がつくとひとつひとつ揃えてしまった!


美しく可愛らしい。レトロな情緒も惹かれてしまう。現在40種以上。逆に品切れをおこし現在は入手不可能なものも。
値段は普通の文庫と変わらないのもウレシイところ。



amzonで注文すると、違う表紙本が送られてきたりすることもあるそうで、間違いなく購入するには店頭買いがいちばん。しかし、、、本屋によってはなかなか見つけられない。宝探し気分で見つけられたらもはやラッキー!?


この「かまわぬ」文庫表紙。じつは若い世代。十代、二十代にも大変評判が良いらしい。


プレゼントにする人、ネットの声を拾うと近代日本文学を読むきっかけにもなっていたりするという。


そもそもー往年の名作本表紙を、いまどき?BL風アニメにして売り出すやり方に、わたし自身あまり賛成したくない。児童向けならともかく、そのような小手先で惹きつけなくとも、若い人も読む本くらいある程度心得て買うのではないかしら。


だってー 『かまわぬ』が受け入れられているのがなにより証拠。


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またすこし増えました。 なによりこの表紙だとずっと大切に読んでゆきたい。そう思える。


そもそも、これらの名作はとうに著作権ギレ。どの出版社からも大方出ているし下手をすればKindleで0円でも読める。かくいうわたしも数年前、目に優しいのかと「Kindle White Paper」なるものまで安売りのときを狙い購入してしまったくらい。ありがたい~。


ーただ現時点ではわたしはKindle paperも良いけれど、紙派ゞーマンガを読むのには見やすい!ただ…紙の手触り、すぐ好きなページにいける。いつの日か便利と思うときがきたとしても、文庫に関してはAmazon購入でも、どちらかというと紙本優先!(あくまでも個人的感想デス)


そして、角川かまわぬシリーズを集めて気がついたこと。


ああーわたしは日本文学の名作を意外に読んだ気になって読んでなかった…! それとも昔読んだままの印象で終わっている、、


一応、むやみに歳だけ重ねた。コロナ禍で感じ方も変わった。現代とは別世界に連れて行ってくれるのは好きな海外小説と一緒。


いまこそ、絶好の読むチャンス!!だなと。


そう思い、まず手にとったのが、、、



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『門』夏目漱石 集英社文庫




多くの出版社から発売されている漱石本。旧仮名遣い有無、付録資料などの点などから一冊一冊が微妙に異なり、じつは手に取りどこの出版社が好みか確認してからチョイスする方が良かったりする。


『門』に関しては文字間隔の読みやすさ、貴重資料など総合すると集英社文庫が個人的にはお薦め


読書後、数日引きずりましたねえ。ズシーンと、、ここで描かれる夫婦のことが、頭からもこころからも離れない。


東京の片隅に住む、宗助と妻のお米夫妻。年齢は三十代。なのに枯れた夫婦のように静かに楚々と暮らす二人。時折、大学生の弟が、金に困りどうも退学になりそうだから、兄の宗助に工面のため、叔父になんとか手紙を書いてくれと頼みにやってくる。だが兄の宗助は優柔不断でのらりくらり。弟はそんな兄に呆れ気味だが、それも仕方ないことかとなぜか納得している。


明治東京の季節ごとに変わりゆく街並み。和やかな生命感。ページは止まらない。


夫婦二人のある謎が徐々に明かされていく。流れと構成の見事さ。子のない夫婦の壮絶な理由。その上にこの夫婦は、ある過去が原因で世間と断絶。逃げるようにここに越してきた二人。


ー宗助とお米は決して最初から枯れていたわけではなかったのだ。読者はそれを知ってゆく。ミステリの謎が明かされるように。


『読書メーター』にも書いたけれど、若いころの悩みや怒りは、先の見えない未来やどうにもならない社会に向かっていく。自分にも、すこしは原因があることにも気がつかずに。


わたしも二十代のころ太宰や武者小路実篤に夢中になった。一冊一冊むさぼるように読み漁ったのは、自分がなにかから逃げたいという共感者を見つけた気持ちだったからかも。


けれどー漱石の書く小説の多くは違う。


大人になるということは、過去の業や過ちもみんな分かった上で、それでも生きていかなくちゃいけない。


人を傷つけたことも、イヤなことから逃げ出した思い出も。背負い生き続けることは、逃げるよりもっと苦しい。多くの人はそれを苦行のように思い続け、それでも尚、生きていく。それもまた人間らしさなのだということを投げかけるー


だから漱石の小説は読む年代によっていつも新しい。若い時以上に、年齢を重ねるごとに深みを増してゆく。


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夏目漱石 写真撮影時が明治45年。漱石も45歳。まさに明治とともにあった人生。


漱石が初期に書いた『坊ちゃん』問答無用の面白さにバイタリティ!完璧に有無を言わせない文体。なんど読み返しても爽快。人が文字でなにかを伝えるとき。ほとんどの接続詞は無用。言葉を伝える単純明快さを教科書のごとく教えてくれる本。


代表作『こころ』ーじっくり読んだのは20年ほど前。通勤電車の中。乗り換え時、なんども降りるのさえ忘れた。もしかしたら、どんな昨今の小説より先が読みたくて仕方なかった。読書後の魂が抜けたような浮遊感と衝撃。重くのしかかる石のような塊。


誰しもが『こころ』をはじめて読んだときの部屋の空気感。電車の中なら、ふと窓から見えた風景をぽーっと見つめたりしたこと。それぞれが覚えていることだろう。


漱石小説の特徴は、読後の満足感に数時間浸ったあとは、絶対に誰かと小説について語りたくなってしまうこと。


「こころのKはどうしてー」「三四郎は美禰子と結ばれることはなかっただろうか?」「坊ちゃんはなぜ教職をやめてしまったんだろう?」とか。物語にどこかしら謎を残しておくのも漱石先生のつくづく上手いところ。


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漱石の貴重な写真を。小説家になる前。熊本で英語教師をしていた時の漱石先生と妻の鏡子奥さま。新婚生活はてんやわんや。2人の真ん中にいるのは、吾輩はネコではなくてワンちゃん!?笑 


慣れない場所、最初の子育てでヘロヘロになった奥さま。危険だと察した漱石と奥さまはひもを結びあって寝ていたとか。まあいろいろあった夫婦のようだけれど夫婦のことは夫婦だけにしか分からない。


漱石小説にはこれは奥さまだなというエピソードがたくさん出てくる。神経症の漱石をかばいながらも大勢の子供を育てあげた現実的でおおらかな奥さんあっての文豪でした。


そんな夫婦をドラマ化したのが

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2016年NHKドラマ『漱石の妻』 妻の鏡子さんが漱石亡きあと発表した『漱石の思い出』が原作。漱石を長谷川博巳。鏡子を尾野真千子。橋田寿賀子賞を受賞したりの大好評ドラマ。


漱石先生作品については、全然語り足りない。全作品数は多くないので、制覇するのがどこかもったいない気もして。


そして、、もうひとり。最近、「え!?この方にこんな一面が」と驚いた作家が、、。


漱石が明治の文豪なら、まるっきり昭和の時代そのものを生きた超天才文豪のひとりといえば、、


それは、、三島由紀夫。 


東大法学部を卒業。大蔵省に在籍した超エリート中の三島が、お茶目な一面を思いきり見せて書いてくれた一冊が、、


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不道徳教育講座』三島由紀夫 昭和33年から「週刊明星」に連載された言いたい放題の抱腹絶倒エッセイ。


「知らない男とでも酒場へ行くべし」「お見合いでタカルべし」とか。世間の常識を軽くユーモアでこてんぱんにやっつけなさいと言わんばかりの三島流の知識とジョークでノリノリ。三島ってこんなお茶目な一面もあったのね~と親しみは倍に。


映像で残る弁の立つ三島口調そのままが読んでいて聞こえてきそう。


熱狂的な三島ファンの方は別にして、みなさんは三島と聞くとどういったイメージでしょう?


十代のころ『仮面の告白』をまず手に取ったわたし。途中までチンプンカンプン。こりゃダメだ。いまのわたしには読み切れないと思い放り投げてしまった(;''∀'')内容自体というよりは絢爛なセリフを、こねくりまわしたような比喩表現に、さっぱりピーマン(←頭の中がカラッポの意味 昭和の言葉w)のわたしの頭の中は疲労困憊。


それから二十年ほど経ち『金閣寺』を、ようやく読めるバランス感覚がついた年代に。


読書中の衝撃たるや! 武者震いのように寒気がし、腕が総毛立った読書体験は後にも先にもなし『金閣寺』だけ。


バーチャルのように囂々と燃える金閣寺が読書中にほんとうに目の前に浮かんできたのですから。三島由紀夫をやっと読みきった喜び+この人は天才だわとひれ伏した。


それでもーわたしの中には三島は小説家というより戦後の時代を牽引したカルチャー像という方が強い。思想についてもよく分からない。ただドキュメンタリーで三島特集などがあると大方テレビをつけてしまう。良し悪しも含め特別感のある芸術家。


ー上記のエッセイでは昭和三十年ごろの日本の若者事情。加えて三島由紀夫が思い切り自虐ネタをやっている。それがときに吹き出すほど愉快に書かれている。


特別に愉快だったのがー-結婚後、自分の妻宛に届いた、無名のある一般人からの手紙をとりあげた章。


三島曰く「これが実に愛情あふれる手紙なのであります」とし、、笑


その妻宛に届いた手紙の中身はというと、、


「奥さま、あなたにこのような手紙はお節介とも思いましたがー(略)貴方がこんど結婚なすった相手。←(三島のこと)世間での作品はどうか知りませんが、随分と遊び人とか。あなたが気の毒です。もういちどお考え直しください。ついつい書きました」というもの。


三島がこれに対し、「おしまいの゛ついつい゛、がまことに真情あふれておりうるわしい友情であります」とー


それは、それは、思いきり皮肉た~っぷりに返答。


皮肉といえば、『吾輩も猫である』も、超エリートである漱石が、自分の分身のような主人公の苦沙弥先生をおもいきり滑稽に書いておおいに笑わせる。


世間ではひときわ偉い人間に思われているのに、実際は、鼻毛をぬいて一本一本並べたり、昼寝ばかりするわ。妻のハゲを見つけてはケンカする。学者仲間と、どうでもいい笑い話に華が咲く、、、。


「あーあ、人間ってほんと、くっだらねえな」と吾輩猫がつぶやくw


庶民からしたら、明日食うのにも困る人がたくさんいた時代。世間では上級者である漱石、太宰、三島らが、自虐ギャグ的な風刺を小説やエッセイでやっていたことがすこぶる面白い。文豪でありながらどこか親しみやすく気さく。人気がいまも衰えない要素のひとつだと思えてしまうほど。


最後に、、、最近とくに読んで印象深かった、三島と高峰秀子の二冊を。


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左『高峰秀子の反骨』と右『彼女たちの三島由紀夫』 


右は最近出版された三島由紀夫が生前に多くの女性著名人たちと対談した記事を集めたもの。岸田今日子、越路吹雪、宇野千代、高峰秀子など目も眩むような当時を彩る女性たちと会話を繰り広げている。


マッチョな思想家としての三島由紀夫のイメージはまったくない。女性を前にソフトで照れたり人間味あふれる文化人の三島がいて微笑ましいほど。好きな女優はオードリー・ヘップバーン。「ローマの休日」についてアツく語っていたりして。


勝手に難しそう~なヨーロッパ女優が好きそうなイメージじゃないですか笑 それがオードリーにメロメロとは。三島由紀夫がなぜ魅力的な女性を主人公にした小説もいくつも書けたのか、この本の中にヒントがあるとしたら興味深い。


高峰秀子エッセイも、竹を割ったような彼女のインタビューがまとめあげられたもので爽快。


東京オリンピックについて物申しているのがとくにいい。オリンピックそのものより、あとで公開された市川崑監督映画『東京オリンピック』についてのこと。世間が「よく分からない」と批判したことに関してスパッと「芸術が分からないなんて」といった反論をしている。生き方についてもブレない姿勢が格好いいー!


エッセイが上手い女性作家というとまず向田邦子。高峰秀子も生前の発言をまとめたエッセイ本が多く出版されている。わたしの周りでも人気が高い。


結局、自分をしっかり持っている人の文章や歯切れのいい言葉は世代を超えて人気ということ。


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類型的なものは好きじゃないんですよ』 エッセイ本表紙 高峰秀子と監督で夫の松山善三さん。キュート!


コロナ禍で世界も日常も変化。こんな時だからこそ先人の言葉や書いたことが響いてくる。


しかもーそれが大昔のこととは思えない、いまと全く変わらない状況にドキっとしたり。こんなときだからこそ、名作や文豪の言葉があらためて染みてきます。


これからもますます古くとて新しいものに触れてゆきたいと思います。

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Comments 2

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ギターマジシャン  
文庫本

70年代、ちょっとした児童書でも500円近くした頃に、200円前後で買える文庫本は中学生になった自分には、すごく魅力でした。

図書室にあった子供向ホームズ、ルパンとは違う原作の文庫本に夢中になって、買い集めましたが、手元に置くことで満足して、きちんと読んだのは半分くらいです。

2021/09/11 (Sat) 14:20 | EDIT | REPLY |   
m-pon5
m-pon5  
To ギターマジシャンさん

>ギターマジシャンさん
コメントありがとうございます♪

きっとギターマジシャンさんは生粋の音楽少年でもあり
感受性いっぱいな文学少年でもあったんじゃないかって勝手に想像しています~^-^

子供のころ本を読んだときのあのワクワク感って忘れられないですよね。
大人になり改めてたくさんの本に触れてその気持ちが甦って楽しくて楽しくて。
最近のテレビや映画が前ほど心ときめかせてくれないこともあるのかも…ゞ
音楽も一緒で、こころの中でイメージがいろいろ広がるのがいいですよね。
ぜひまた手にとりステキな音楽のお供に本の世界も楽しんでみて下さい<(_ _)>

2021/09/12 (Sun) 11:04 | EDIT | REPLY |   

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