「ザリガニの鳴くところ」 全米700万部!日本で本屋大賞受賞作が映画化! 読書への想い
全米現時点で700万部のベストセラー。日本でも「本屋大賞翻訳部門1位」となった本。

この少女を、生きてください。
<ストーリー> ノース・カロライナ州の湿地で男の死体が発見された。人々は「湿地の少女」に疑いの目を向ける。6歳で家族に見捨てられたときから、カイアは湿地の小屋でたったひとり生きなければならなかった。読み書きを教えてくれた少年テイトに恋心を抱くが、彼は大学進学のため彼女のもとを去ってゆく。以来、村の人々に「湿地の少女」と呼ばれ蔑まれながらも、彼女は生き物が自然のままに生きる「ザリガニの鳴くところ」へと思いをはせて静かに暮らしていた。しかしあるとき、村の裕福な青年チェイスが彼女に近づく…。みずみずしい自然に抱かれた少女の人生が不審死事件と交錯するとき、物語は予想を超える結末へ感動と驚愕のベストセラー。
「三度の飯より○○が好き」という言葉があります。
意味を調べると… なによりも好きであること。ひどく熱中していること。
、、、わたしにとって「音楽」「音楽」と並び、もうひとつ!
欠かせないものといえば「読書」であることは間違いなく、、
原点は、幼き日。母が寝る前に聞かせてくれた数々の映画や童話。
「ローマの休日」のストーリーに子供ごころに胸躍らせ、「安寿と厨子王(山椒大夫)」では、人買いが表れ、家族を乗せた船が、右、左と永遠に離れ離れになっていく。その場面が近づくと恐ろしくてコワくてコワくて~ぶるぶる。布団をかぶってもなかなか寝つけないものでした。
とにかく自由に想像力、イメージを胸に抱かせることを教えてくれた母には感謝、感謝。
小学生になり字が読めるようになってから本好き度は、加速!
走ること。ボール遊び。体育の時間も大好きなのに、長い放課時となると、ほぼ毎日、図書室へ行ってはホクホク気分で本を借りる。伝記からギリシャ神話まで。遊んでばかりで勉強も二の次。けれど不思議。読書感想文や作文だけは苦にならず。
ー先生から褒められたら読んでひたすら書く。まさに〇〇もおだてりゃ木に登るという単純さゞ(恥)
昔からの本好き。読書愛については過去の記事→『わたしの本への想い』や『海外小説の醍醐味!本大好き イーストウッド映画化マイクル・コナリー著』でも綴っていますが、子供のころから青年期~いまと考えたら、、、
現在がーいちばん年代的に本の内容も情緒も自然にサクサクと心情に入ってくる時期に差しかかったのではと感じます。
無駄に歳だけ重ねた気がしているけど、いい音楽や良い映画。どこか違う世界へ誘ってくれる読書然り、「うん!うん! 分かる分かる」と物事も知識も分かる年齢になった分だけ逆に面白い!
、、、、ほんの未熟な小さな経験さえ、それらを慈しむことに役立っているとしたら、こんなラッキーなことはないのですよね!
子供のころのキラキラした瞬発力の感性には叶わない。でもすこしばかり厄介な大人になった分だけ、本の主人公の痛みや喜びに通ずることもたくさんある。すると読書がもう楽しくて仕方がない~。
そんな、、大の本好きなわたしが、読んだ本を登録し、ちょっとしたレビューを書くため活用しているのが、、
「読書メーター」
読書好きさんならすでに活用されている方も多いはず。(スマホの方はPC表示に切り替えると見れるようです)
↓
『読書メーター』 m-ponのページ
↑
ご覧のように、わたしの場合は7割が海外翻訳本、3割が日本人作家。
ー好きな作家はもちろん、読みたい本はこだわらず両方チョイス! 以前ブログに本の感想を書いていたのですが、ここ数年は「読書メーター」にレビューを掲載。
便利なのは備忘禄として使用できること。もちろん登録無料。レビューを書く、書かないもまったく自由。
気に入った感想にはイイねも出来る。Amazonとも連携しているようで、漫画から技術系、雑誌まで網羅しているので検索すると、どんな本でも出てくるのにはビックリ。巷の本離れが危惧されて数年ーそんなことがウソだろっていうほど、本好きさんたちが思いのままレビュー。日々、賑わいを見せています。
さて、そんな、わたしが、、、
最近ー読書した中でも特別に胸にズシリとした感慨と生きるはかなさ、逆に力強さまで残していく名作と出会ってしまった。
内側からこころ揺り動かされ、読み終わったあと数分のあいだ、誰とも口をきけず、余韻が広がりすぎて動けなくなってしまう物語がー
ー上でも紹介した<「ザリガニの鳴くところ」
いまは全世界で1,100万部を突破。
<読書メーター>での、わたしの作品レビューです。
ーアメリカという壮大な国。
これまでいくつかの文化に触れ多くは知ったつもりになっていた。しかし見たことも聞いたこともない世界。未知の土地が多数あり、取り残された人々の暮らしがそこにあることへの驚愕。同時に自分の無知さにあ然!
舞台は50年代から60年代末アメリカ。南部ノース・カロライナの湿地。家族から街からもたった一人とり残された少女カイア。彼女が成長し、老年になるまでの過酷な運命。ミステリー要素と神秘的な自然界との暮らし。
ノスタルジーな時代とともに描かれるカイアの人生。そこにはーあまりにも残酷で悲しい恋の結末が。
父親が事業に失敗。 ノース・カロライナ州で暮らすこととなった過酷で荒んだ生活をしている一家。貧困。父親の暴力。まず母親が家を出る。兄弟もまたひとり、ひとりと家を出ていく。時折、帰ってきた父親も次第に戻らなくなっていく。
6歳少女カイアはたった1人、湿地が広がる小屋で生活することに。
お金もない。虐められ教育にも溶け込めない。街に行けば、みなから蔑んだ目で見られる。それでもカイアは工夫し生き延びる。彼女を唯一、気遣ってくれるのは街に行くまでの船を出してくれる黒人の船乗りジャンピンだけ。
それでもカイアはしだいに、湿地に、壮大な誰も踏み入れたことのないその土地の中で幸せを見出してゆく。
彼女は鳥たちと話す。
森と会話する。
ボートに乗り、先に住む、さまざまな自然動物たちと語り合う。
彼女を救ってくれるのは自然との魂のふれあい。少女は風変わりと見られようが、彼女自身の中で生きる術。糧を見つけていく。
しかし-自然界にも法則があるように、人間にも必ず訪れる法則がある。人は誰でも「成長」してゆくということ。
それはときに喜ばしいことも運んでくれるけれど、痛みを伴うキリキリする残酷なできごとも、自らへ放たれる。19才になった彼女にも、その日が訪れた。 カイアの人生の歯車はさらに少しずつ狂っていく、、。

寂しいときや現実という表面の裏側に逃げ出したいとき。カイアはボートを漕いでひたすら想いを載せていく。
そんなある日ーボートで父親と釣りに来ていた優しい少年テイトと出会う。おなじ価値観をもつことにきづいた二人。淡い恋に想いを馳せるカイア。
ところがテイトは、カイアへの愛はあるものの、二人の未来に現実を見い出せないことに決心が揺らぎ、進学ととも彼女の元から去ってしまう。悲観にくれるカイア。
一生恋などしないと誓う彼女に、もう一人。街一番の人気者。チェイスという名のプレイボーイが彼女に近づいてくる、、、。
ページ最終章。最後の、、最後の1行、、真実が明かされるまで息を止めることができません。
殺人事件の犯人はいったい誰だったのか。読み終えたときの胸に迫りくる、深い深い郷愁、少女を取り巻く人間たちの限りないそれぞれの哀切。
ミステリーとしての読み応え。ー圧巻なのが、カイアと共存し湿地を取り囲む自然界の神秘的なまでの生き生きとした描写。
作者ディーリア・オーエンスはジョージア大学で動物学の理学士号と博士号を取得。カリフォルニア大学デイビス校で動物行動学を専攻している専門家とのこと。
オーエンスでなかったら、圧倒的なこの世界感は出せなかっただろうし、彼女だからこそ渾身の思いで自然へのリスペクト。同時にある種、自然界が変わりゆくとの同じように、人が生きていく上での移り行く残酷な現実をここまで映し出せたのではないかと思う。

(Photo Bristol public Library)
わたしはこの本がなぜアメリカでこれだけ売れ、二年間にもわたりベストセラーになるほど愛されている理由が分かる気がする。
なぜなら、、、それは、、南部からの長く長く続く歴史が紐解いている。
当時「ホワイト・ラッシュ」と呼ばれた貧乏白人への差別。アメリカ人は昔もいまもだけれど、差別が浮き彫りになる問題を抱え矛盾しながらも、さまざまな弱者と呼ばれる人に対して懺悔意識ももっている。こと、文化とスポーツ分野に対しては。
加えて50年代~アメリカへのノスタルジー。小説や映画もだけれど、アメリカ人はそこに痛烈な憧れやハートフルなセンチメンタルを感じるらしい。あの時代を舞台にした作品が途切れることはない。そこに一級のミステリーが絡んだら、読まずにはいられない。
これからお読みになる方が羨ましい。初めての感動や感銘はそのときだけのもの。
翻訳本が苦手だなという方も、どうぞ先入観なしで読んでみてください。
最初数ページのとっかかりさえ乗り越えれば、勇気ある個性的な少女の通った生きざま。見たこともない神秘な湿地の世界へすぐ引き込まれることだろうと思います。
最近の発表では、女優兼プロデューサーのリーザ・ウィザースプーンがこの本の映画化権を買い取り、FOXで制作することも決定。

主人公カイアをイギリス人女優デイジー・エドガージョーンズが演じる。アメリカ人少女をイギリス女優が演じることが興味深い。あとはフレッシュな顔ぶれテイラー・ジョン・スミスとハリス・ディキンソンが、それぞれテイト・ウォーカーとチェイス・アンドリュースとして出演。俳優としてまだ色がついてない彼らに決めたのは正解。
正直ベストセラーになった小説の映画化は危惧しているのも事実。「マディソン郡の橋」「ドラゴン・タトゥーの女」「ゴーン・ガール」などヒットはしたものの原作から入ると、どうしても人それぞれイメージがすでに固定化され、結局は賛否両論に。
はたして小説の吸い込まれていくような静粛と神秘。美しさと残酷さの対比が映像でどこまで表せるのか、しばし待つことに。
最後に「ザリガニの鳴くところ」、という意味。
これは、ザリガニの鳴く声さえ聞こえると言われているほど、深い深い「湿地」の場所だということ。
そんなところが、ほんとうにあるのか。けれどー耳を傾ければ聞こえてくる…その声すら伝えてくれる一冊。
遥かなるイマジネーション。行きたくても行けない場所、ありとあらゆる感性を持つ人たちに、ページ1枚開くだけで出会わせてくれる本の素晴らしさ。 映画、音楽とともに、良い本にも出会い続けてゆきたいです。
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