映画 「家路」あの日を決して忘れない。キャストと制作陣が想いを込めた映画と共に。

m-pon5


今日は多くの人の心に刻まれている大切な日です。

         
決して、時間は区切りではない。 生きていくため悲しみを乗り越える日々はこれからも続いていく。 


震災後に見て、たびたび心の中に思い出す映画があります。


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「家路」 2014年製作/公開 118分/G/日本配給:ビターズ・エンド


(解説)
東日本大震災後の福島に暮らす家族の喪失と再生を映し出した映画。 松山ケンイチ 田中裕子、内野聖陽、安藤サクラなど実力俳優をそろえ、福島オールロケを敢行。絶望的な状況下でも希望に向かって踏み出す家族の姿を描き出す。「いつか読書する日」の青木研次によるオリジナル脚本を、これまでドキュメンタリー作品で手腕をふるってきた久保田直監督のメガホンで映画化。「家族とは」「生きるとは」「人間の誇りとは」「命とは」と観るものに問いかける普遍的な物語へと昇華させた。<公式サイトより>


(あらすじ)
震災の影響によって、故郷が“帰れない場所"になってしまった。先祖代々受け継いできた土地を失い鬱々と過ごす兄(内野聖陽)ととその妻(安藤サクラ)。 そして胸の奥に諦めと深い悲しみを抱えた母(田中裕子)。
生きてきた土地を離れ、そんな先の見えない日々を過ごす彼らの元へ、20年近く前に故郷を出たまま、音信不通だった弟(松山ケンイチ)突然帰郷した。 たった一人で苗を育て、今はもう誰もいなくなってしまった田圃に苗を植える弟。
過去の葛藤を抱えながらも、故郷で生きることを決めた弟が、バラバラになってしまった家族の心を結びつけていく--


それは小さな映画でした。


オール・キャストでありながら決して派手な宣伝もないー


それでも製作者、出演者たちが、警戒区域となっている福島でロケを決行したこと。わたしが俳優としても好きな内野聖陽。田中裕子。当時、新人でありながら爛れた庶民感でブレイク寸前の安藤サクラなど、実力者で固められた役者の顔ぶれ。スタッフが作品にかける並々ならぬ執念と意志を感じ、ふだん邦画から遠ざかっているわたしも久しぶりに観たい!と思えた作品だった。


そして、それは見終わったあと裏切られることはない余韻。 復興は決して綺麗ごとではない。それでも懸命に生きる人々の道を示してくれるような作品だった。


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家族のそれまでの生活は一転。富岡町にオールロケしたからこそ伝わる真実。そこに今も残る街並みの美しさ。対する閉塞感が悲しすぎる。


普通の暮らしから狭すぎる仮設住宅へ。時折、自宅を確認するため戻ることすら原発との戦いとなる。荒れ果てる田畑。自然がこれほど溢れた場所なのにもう誰も入れない。


収入も激変する。その上、まったくプライバシーのない仮設住宅の中、大人数と子供を抱えた家族にどんな生活が営んでいけるというのだろう。 決してテレビなどでは取り上げられない深刻さ、やるせない家庭の問題にまで映画は切り込んでくる。


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総一(内野)の妻(安藤サクラ)は生きていくために、仮設住宅からデリヘリへ通う日々。それを知っているのに止めることのできない夫の焦燥感。怒りすらすでにわかない。続けてきた農業を続けることができず村では命を絶つ者もいた。こんな毎日に誰が希望をもてるのか。 家族の心は次第に寂れバラバラになっていく。


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未曾有の体験とショック。息子夫婦と仮設に住むストレスも重なり、母(田中裕子)もどこか心が遠くへいってしまっているよう。認知症の兆候が見られ、なにかに縋りつきたい想いが爆発したかのように話し続ける夜もあった。


母の心の奥にあるのは20年前に故郷を出て行った次男の次郎(松山ケンイチ)のこと。彼さえいてくれたら。戻ってきてくれたら。


、、そんなとき、村に一人の青年が戻ってくる。誰もいないあの村。原発に汚染され立ち入り禁止とされている実家に住みついている男がいるという。 それが総一の弟であり、母がずっと待ち続けていた息子の次郎であった。


「この土地を愛していることに気がついた」彼はいう。当然兄の総一とはぶつかりあう。「今さらこの地に戻ってきて何になるんだ」と。


しかし、、、次郎は決心する。いまは幸せな表情をし、どこか夢の中にいるような母と一緒に。まるで仙人のような風格さえ漂わせる彼は、なにかに立ち向かうように田んぼに苗を一心不乱に植え始める。 先は分からない。けれどいまを生きていきたい。


  
「家路」予告編 


すがすがしい田園風景とはあまりに縁遠く思える原発。震災の怖さを感じずにはいられない作品。


内野&安藤コンビ夫婦が非常に生々しい。生きる術は綺麗ごとではない。実際に「前向き」になどと軽くいえない状況になったら、人が生きていく姿はだらしなくひたすら貪欲であること。その部分を曝け出してくれる。人間らしさをありのままに演じている。


田中裕子の母親役。彼女はこの映画の芯になっている。彼女がいままで生きた証が「フクシマ」の土地であり暮らし続けた故郷。張り詰めた心ながら、ふっと気を抜いた時に、よろけてしまいそうな、か細さに涙が出てくる。


昨今ー田中裕子が出る瞬間が、映画やドラマの正念場になる。それくらいのいまや存在感の俳優だと思う。


なぜ彼女の作品が日本アカデミー賞にちっとも選出されず、田中裕子が主演女優賞にノミネートされないのか摩訶不思議だ。個人的に、どれだけあのイベントが日本映画界にとって価値と権威ある賞なのか、何年たっても分からない原因のひとつになっているくらいに。


作品は非常に生々しさがある反面、ラストに近づくにつれ見えないこその「希望」をたくすため、松山ケンイチを現世から舞い戻ったどこか超然として浮世離れした人間にすることで、これは決してドキュメンタリーではないことも示している。そこが物足りなく感じる人もいるかもしれないけれど、、、


ただそれでこそ、いまは夢のように思えることでもいつか未来へ続く。明日を託せる希望へ。それを描けるのが「映画」の力だと心に留めておきたい。


わたしは作品を見た時、映画の撮影にかかわったスタッフ、ここに集まったキャストたちは信じられる。強く感じたことを覚えている。


原発の中、撮影に挑む姿勢は生半可なものではなかっただろうと思うから。決して大作であった訳でない、ただ、ただ、この映画に携わろうとした真摯さと勇気に心打たれたからなのです。


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「家路」公開時ポスター


今年で十年。この映画が製作されてから約七年。 あの日からどう変わったのでしょう。田からは米が収穫され、花は今日も咲いているのでしょうか。


あの日、わたしは会社がたまたま休みで自宅でテレビを見ていました。突然にユラユラと天井の電気が右左に振れ、すぐなにかが起きたと感じ、東北での震災のことを瞬く間に知りました。こちらの地方でもこれだけ揺れたというのは、どれほど震災が大きいものかと心が動揺し、すぐ95年の出来事が頭をよぎり、、、。


あの時も…あの場所からあんなに離れていたのに蛍光灯がゆれた。同じように。だからーまさか、と。


BSや様々なところで震災関連の番組が放映されている。大切な人といまだに会えないまま想いを馳せている方。なぜあのとき、こうしなかったのかと後悔されている方。大切な思い出深い土地からよぎなく離れ、どんなにか不安で寂しい気持ちを抱え、遠くの地で日々過ごされてきただろう方。なにより無念な思いで突然旅立った多くの方たち。


「十年は節目でもなんでもない。一日一日が変わらない。忘れるはずはない」 津波に流された息子さんをずっと探し続けているお父様が番組のなかでお話されていました。 どれだけの涙をこの年月流されてきたのでしょう。


わたしたちもこの日を決して忘れない。心だけでも東北の方たちと寄り添いたい。そして防災について大切な人を守るため、考える日にしたいと思います。





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Comments 4

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ギターマジシャン  
田中裕子

自分にとっては、「マー姉ちゃん」で、サザエさんの生みの親、長谷川町子を演じた人であり、「おしん」では、小林綾子が大きくなった役という感じで、やはり大河ドラマも含めて。役者さんにはNHKのドラマの印象が強いです。

あと、今はなくなってしまった東芝日曜劇場、特に向田邦子作品に顔を出していた印象があって、これまた東芝日曜劇場は、今のような「JIN-仁」「下町ロケット」、「陸王」などの大作と違って、場面展開も出演者も少ない設定で、市井の人々の日常を取り上げているようなイメージがあり、その世界観がすごく好きでした。

3月11日については、今でも単発の短いドラマが作られていますが、こうした主演級の人を揃えた映画もあったのですね。

田中裕子に限らず、娘役をやっていた女優さんが母親役、さらには祖母役を演じるのを見るにつけ、自分が歳を取ったことを実感します。

日本アカデミー賞は、レコード大賞などと同様で、いろいろ闇があったりしそうです。

2021/03/11 (Thu) 23:45 | EDIT | REPLY |   
m-pon5
m-pon5  
Re: 田中裕子


ギターマジシャンさま


こんばんは♪
コメントありがとうございます(*^-^*)っ


>田中裕子の向田作品


わあ! スゴイ~!当時ご覧になってたんですね。お話聞けて良かったです~


ちょうど一昨年ほど前に、BS11で「向田邦子ドラマ特集」としていくつか再放送があったんです。
どうも80年半ばから90年代後半くらいにかけ、TBSでお盆とお正月に定期的に放映されていた単発ドラマのようでして
ほぼ全部に田中裕子が主演していたんです。
あれは「東芝日曜劇場」のワクだったのですね^^
演出家の久世さん演出が、おっしゃる通り独特の雰囲気で毎回惹きこまれていました。


田中裕子が、あのころ30代から40代くらいでしょうか。まあ~その色っぽいこと!(笑)
しかも相手役が、これまた一番男っぷりのいいころの小林薫と決まってるんです~~
まあ~この二人が並ぶだけで、なにもないうちから、なにか起こりそうなのは決まってるという( *´艸`)


ネットでも少し話題になっておりました。
「いやあ~色気がダダ漏れしすぎ。あんな大人の俳優も今いないし大人のドラマも最近ないよね」なんて。


「マー姉ちゃん」はしっかり見たことはないのですけれどゞ「天城超え」「夜叉」の妖艶な魅力や「おしん」もやっぱり忘れ難いです~女らしさとしなやかな強さ。そこはかとない女優としての力がある人ですよね。


中年からいまにかけては、年月に抗ってる俳優が多い中で、自然のナチュラルさを保ってるのがいいなあって。そういうタイプの俳優を探すのが結構アメリカでも難しい中、日本においてはさらに貴重な存在といいますか…ヨーロッパにはたくさんいますよね。


>日本アカデミー賞

年々、大衆性なのか、芸術性なのか、なにが基準になってるのか分からない賞になってる気がします(汗) 米アカデミー賞にも多かれ少なかれ色々あるとは思うのでけれど、それ以上に忖度がありすぎのような。それでも健さんがいたころや、90年くらいまでは女優たちの絢爛たるドレスを見るだけでも楽しみがあったのですけれどここ数年は…日テレの宣伝番組になってるようでほとんど真剣に見なくなっちゃった番組のひとつです。



邦画自体からも、最近はほぼ遠ざかってますけれど、往年の名作などは大好きなんですよね( ◠‿◠ )


さきほどフクシマを扱ったもうひとつの映画が放映されてましたね。実際現場にいた方たち、映画の出演者たちにはほんとう敬意は持てるんですけれど、どうして邦画はあんなに大袈裟な演技とセリフが必要で、ドラマチックな音楽を流すのでしょうね。
この物語にヒーローはいらないのに。なんだか役者が役者を演じているようで、逆になかなかドラマに入り込めず…


裏でNHKで放映していた「72時間ドキュメント 福島 浪江町にある小さなお弁当屋さん」の方により心奪われました。
(この番組は大好きでスタート当初から、ほぼ毎週見ています)

除染作業で働く人たちや、なにもないけれど故郷だから戻ってきた人々。ドキュメンタリーの力に敵うものはないのかもしれませんね。


とりとめもなく長々とすいません(*^-^*)ドラマをご存じだったのでより嬉しくなりました。ありがとうございます。
本日は寒の戻りというのでしょうか、寒かったです~。ギターマジシャンさんもお風邪などお気をつけくださいね。

2021/03/13 (Sat) 00:51 | EDIT | REPLY |   
ももPAPA  
あの日のことは生涯忘れません

m-pon5さん おはようございます♪

昨夜は、ご飯を食べてお風呂に使ってPCに向かいながらウトウトして そのままスヤスヤと・・
気付いたら深夜1時前でした。(^^;


あの日から10年 でもそんな感じはしません。

あまりにもあの日の出来事の記憶が強烈に心に刻まれていて・・
よく晴れた日でした。私はいつものようにワンコを乗っけて買い出しからの帰路、途中でローソンポプラと道路を挟んで向かい側のスタンドに立ち寄り、テレビを観ていました。

あのときは東京の様子が映し出されていて、沢山の人が電車から降りて線路伝いに歩いていました。
その後、三陸沖でM9の地震が発生し、津波警報が出されていると知って、事の重大さがその時点で初めてわかりました。
それから急いで家に帰り、テレビで状況を見てましたが、サイレンが鳴って海の向こうから白く泡だちながら波が波止場方面に押し寄せ、船や車 家までもが飲み込まれていくのを、これは現実なのかと呆然と観ていました。

地震による家屋の倒壊 津波 そして福島第一原発事故 未曾有の大災害が現実に起こっているのを目のあたりにして、なぜ自然はこんなに無慈悲で恐ろしいことをもたらすのか やり場のない怒りと悔しさ 悲しみで涙が溢れて止まらなかったのを今も覚えています。

小さな子どもたち 小中高校生たち 大人の人たち お年寄り そしてワンコやニャンコたち
たくさんの尊い命を一瞬で奪い去っていったあの地震のことは一生忘れません。
亡くなられた方々、そして動物たちのご冥福を心からお祈り致します。


この映画 WOWOWで放映されたような記憶があります。
録画しようとしてウッカリ しまった! と思いながら今までまだ観れないでいる映画です。
田中裕子さんは最近、BSの科学番組でナレーターをされたり幅広く活動しておられますね。
女優さんとしても味わいのある演技で実力ある個性派女優 という印象を持っています。
ぜひ、観たい映画です。

2021/03/13 (Sat) 10:39 | EDIT | REPLY |   
m-pon5
m-pon5  
Re: あの日のことは生涯忘れません



ももPAPAさま


こんばんは♪
コメントありがとうございます(*^-^*)


ももPAPAさんもあの日の記憶はしっかり心に刻まれているのですね。
震災にあわれた方たちはもちろん、あの日の記憶。あの時間。どこにいた人もあの瞬間は心に残ってるのでしょうね。


おっしゃる通りここまでの時間はとても長いようで数年前のことくらいに早くも感じます。。


ももPAPAさんはワンちゃんたちのお出かけの時にニュースで震災のことを知ったんですね。とっても晴れた日でしたので
余計に画面に映し出されている光景が信じられなかったですよね。
わたしのところは、その時はまだ先代のわんこの時でしたので、そのことも一緒に思い出され時間の流れを切なく感じます。


あの日から一、二週間は仕事へ行っていても心落ち着かなく、それでもみんな一緒に頑張ろうっていう気持ちが芽生えてましたね。仕事関係のお客様なども文句いう人も一人もいなくて状況を理解され、ああいうときみんなの心がひとつになるような温かさは尊いなあって、そのこともとっても印象に残っています。


震災にあわれたご家族の中には、わんちゃんや動物たちを、その場所にどうしても置き去りにしていかなければならない状況に追い込まれた方も大勢いて。。どんなにか心苦しく悲しかったでしょうね。
何年かたってボランティアの方たちを通し、わんちゃんと再会したとき、おいおい泣いていたおじいさんの姿がいまも思い出されます。


日本というか世界中どこでなにが起きてもおかしくない自然災害ですからほんとうにコワいですよね。
こちらも南海トラフがくると言われている地域に入ってますので、心から他人事じゃなくて。ちょっとでも揺れるとドキッとします。


わんこと家族、どこに逃げたらいいのかなんて今から考えることがあります。
ももPAPAさんもわんちゃんたち含めみんなが穏やかに過ごせますように。あの日を忘れない。皆さんに心寄り添いながら思います。


「家路」とても地味で小さな作品ですけれど見終わったあと色々なこと感じ考えさせてくれるいい映画でした(^-^)
ぜひ機会があったらご覧になってみてくださいね。ももPAPAさんのお料理もいつもブログで拝見してます♪美味しそう。いつも写真見るとお腹がなります~~ありがとうございます(*^-^*)

2021/03/13 (Sat) 17:58 | EDIT | REPLY |   

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